家族で受け継ぐ 昔ながらの対面販売 はいさい食品


家族で受け継ぐ 昔ながらの対面販売 はいさい食品 (左から)はいさい食品3代目の上原壮介(そうすけ)さん、伯母の糸数多美子さん、兄の上原寿雄(ひさお)さん、母の上原直美さん。壮介さんと寿雄さんはそれぞれ敷地内で小さな店を営んでいる。糸数多美子さんは「おばぁラッパーズ」のメンバーとしても活動中=那覇市安里の「はいさい食品」 写真・村山望
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

地元の台所 笑顔で支えて65年

後継者不足や大型スーパーの進出で昔ながらの商店が減りつつある中、変わらぬスタイルで営業しているのが栄町市場にある「はいさい食品」だ。新たな取り組みも展開しつつ、顧客と対話しながら商品を売る対面販売のスタイルを守っている。親族と共に祖父が始めた商店と市場を盛り上げようと奮闘する3代目の上原壮介さんに話を聞いた。

ゆいレール安里駅から程近い「栄町市場」。細い路地に店舗が立ち並ぶ昔ながらの風情が残る市場だ。その中でも最も古い商店の一つが「はいさい食品」。野菜や果物、食料品、日用品までそろう商店で、店先からは従業員と客の楽しそうな会話が聞こえてくる。従業員は皆家族や親戚。「母、父、伯母2人、兄、自分の6人。家族だからけんかもよくします」と3代目の上原壮介さんは笑顔を見せる。

創業約65年のはいさい商店は、今帰仁村出身の上原将光さんが「上原商店」として創業したのが始まり。創業者の娘・糸数多美子さんは「当時はスーパーもない時代だったので、夕方になると人がいっぱいで歩けないほどでした」と振り返る。

創業者の息子・一展さんが2代目として引継ぎ、現在はその息子である壮介さんが3代目として父から学びながら奮闘している。壮介さんが家業に従事し始めたのは8年ほど前。短期留学や県外での生活を経て帰沖した頃だ。「県外で暮らしてみて、やっぱり沖縄がいいなと思って戻ってきました。自分自身も商売が好きで営業なども楽しくやっています」と話す。

行動力で危機乗り越え

はいさい食品の店内。青果物の他、食料品、調味料、日用品なども並ぶ

はいさい食品の魅力は「対面売り」だ。利用客と話しながら商品を売るスタイルを創業当初から守り続け、人とのつながりを大切にしている。地元で親しまれてきた商店も、コロナ禍で経営は危機的状況に。壮介さんは配達などの新しい取り組みを始め、売り上げ確保に努めた。「空いている時間を使って飲食店などへの配達を始めました。ありがたいことに呼びかけると多くの人が反応してくれました」。人とのつながりに支えられ、新規注文も停止するほど注文が来た。

戦後の人々の暮らしを支えてきた栄町市場。酒場などが増えた今は、夜のにぎやかさに比べ、昼はシャッターが下りている店も多い。昼の市場を盛り上げようと、壮介さんと兄の寿雄さんは敷地内でそれぞれ店をオープンした。

昼の市場も盛り上げたい

壮介さんが今年オープンした削りたてかつお節専門店「出汁ダシ」

寿雄さんは約5年前から始めたのが、スムージーと野菜ジュースのお店「野菜と果物Factoryコツコツ」。店で廃棄されてしまう野菜などを使い、ドリンクや料理を提供している。一方、壮介さんは今年の1月に削りたてかつお節専門店「出汁ダシ」を開店。きっかけは、市場からかつお節店がなくなってしまったことだった。「お客さんからの『(かつお節)ないの?』という落胆の声が大きかったんです」。かつお節の香りが戻った市場に多くの人が喜んだという。はいさい食品での仕入れや配達もこなしながら忙しく動き回る壮介さん。それでも「自分が仕入れた野菜や削ったかつお節をおいしいと喜んでもらえることがやりがい」だ。

兄の寿雄さんの店「野菜と果物Factory コツコツ」。壮介さんの店とコラボという形で、かつお節を使った定食を朝8時から提供している

最近では若い人たちがケーキ屋やパン屋などを市場に開店している。「自分たちが頑張っていれば、昼の市場も盛り上がってくると期待しています。市場が人の生活のサードプレイス(第三の場所)のような存在になれたらうれしい」と期待する。

(坂本永通子)


はいさい食品

那覇市安里379
TEL 098―884―1619
営業時間:9時~18時
定休日:日曜
Instagram:@haisaishop

(2024年9月19日付 週刊レキオ掲載)