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17年ぶり県勢の幕内力士 美ノ海 積み重ねた努力結実 30歳の業師「沖縄の子の希望に」


17年ぶり県勢の幕内力士 美ノ海 積み重ねた努力結実 30歳の業師「沖縄の子の希望に」 新入幕した九州場所で勝ち越した美ノ海=大阪府の大浜だいしんアリーナ
この記事を書いた人 Avatar photo 古川 峻

 17年ぶりに県勢5人目となる幕内力士が誕生した。新入幕した九州場所は9勝6敗とし、県出身の幕内力士として24年ぶりに勝ち越した。初土俵を踏んでから7年半あまり。積み重ねた努力を結実させた。 

 決して恵まれているとは言えない体格で常に勝つ方法を研究してきた。どんな相手にも攻め口を見つけられる技の幅は、比較的上背がない沖縄力士の戦い方を示しているようでもある。「小さいし才能もないけど、しつこく諦めずに続けていればどうにかなるかもしれない」。11月の九州場所は新入幕で9勝を挙げ、唯一勝ち越した。

 苦労人である。2016年に初土俵を踏むとすぐに序二段と三段目で優勝したが、そこからが長かった。幕下と十両を3度も往復している。十両の勝ち越しが安定し始めた直後の21年初場所。けがで休場、不調が続いた。「結果が出ず苦しかったが、やるべきことをやってきた」

 けがした経験から、「いつ体が壊れるか分からない。身を削っている」と腹をくくる。それだけに九州場所は、「新入幕して、勝つことよりも悔いのないように好きに相撲を取った」と、前に出る意識を強くし、好成績につなげた。

鋭い相撲を取る美ノ海(右)=2023年12月17日、大阪府の大浜だいしんアリーナ

 中でも日大の先輩、遠藤に土を付けた取組は白眉だった。得意の左前みつを取れずとも、強い踏み込みやまわしを切る動作など、幾重もの攻防があった。30歳の業師は「この年になってもまだやるべき課題を発見できる」とうれしそうに話す。

 しこ名は「沖縄の人に応援してもらえるように」と付けている。本名の木崎は沖縄ではなじみのない苗字のためだ。「幕内でもやれるんだぞと、(小さくて)諦めそうになっている沖縄の子の希望になれたらいい」。14日の初場所は、けがせずに土俵に上がり、まずは勝ち越すことを目標に据える。「(勝ち越しが)見えてきたら三賞とか三役も狙いたい」。県勢が未到の舞台へ、淡々と研さんを重ねる。

(文と写真・古川峻)


 ちゅらのうみ 1993年5月6日生まれ。うるま市出身。178センチ、141キロ。具志川中―鳥取城北高―日大出。本名は木崎信志、木瀬部屋所属。2016年の春場所で初土俵を踏み、18年名古屋場所で十両昇進。23年九州場所で新入幕した。県勢5人目の幕内力士となった。小兵で動きは速く、前みつを引いての寄りが鋭い。