レース中、目の前で倒れた高齢男性を…救命経験生かして支える側に 「メディカルランナー」佐久川さん <第29回2024おきなわマラソン>


レース中、目の前で倒れた高齢男性を…救命経験生かして支える側に 「メディカルランナー」佐久川さん <第29回2024おきなわマラソン> 「全てのランナーが安心して走りきる手伝いができてよかった」と話し、次回大会でもメディカルランナーとして参加を見据える佐久川正太郎さん=18日、沖縄市の県総合運動公園
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 【中部】18日に開催された「第29回2024おきなわマラソン」は、県内外から7907人が参加した。職域対抗で絆を深めるなど、それぞれの目標を掲げて走り抜けた。熱い日差しの下、ランナーを元気づけようと、沿道ではボランティアが水や食べ物を配って応援した。協賛企業も給水などでランナーの背中を後押しした。

 沿道応援や会場設営など多くのボランティアが参加した第29回2024おきなわマラソン。一般ランナーと共に走りながら、安心・安全なレース環境を下支えしたのはメディカルランナーだった。今回の大会には約30人が参加。浦添市から参加した佐久川正太郎さん(23)もその一人だ。各所で足をつった人にアイシング(冷却)をしてレースに復帰させるなど「最後まで走りきってもらう」ために、ランナーに寄り添い支え続けた。

 佐久川さんは2023年4月に新社会人として、浦添市内の医療機関に臨床工学技士として就職。医療機器のメンテナンスなど、医療従事者として業務に励んでいる。その傍ら、高校生から続けるマラソンにも挑戦している。

 昨年12月、一般ランナーとしてNAHAマラソンに参加した時、前方の高齢男性が足を絡めて倒れた。付き添いで隣にいた女性も取り乱した様子で、急を要するように見えたという。

 「何かしなければ」―。男性のそばに駆け寄り、呼吸などを確認した時には、吐血し、心停止していた。とっさにAED(自動体外式除細動器)を持ってくるようスタッフに依頼し、救命措置を施し、救急車につないだ。後に男性は一命を取り留めたことを知った。この経験から、おきなわマラソンではメディカルランナーとして、一般の参加者を支えようと決意したと振り返る。

 18日のおきなわマラソン大会当日も、過呼吸で意識がもうろうとした参加者のために救急車を依頼するなど、知識と経験を生かしてランナーを支えた。

 制限時間ぎりぎりまでコースにとどまり、ほとんどのランナーが走りきることを見送った上でゴールした。ゴール地点の県総合運動公園には、佐久川さんが応急処置を施した人の笑顔もあったという。「皆さんが安心して走れる手助けができたのがうれしかった。医療従事者としても、マラソン好きとしても今後に生きる経験になった」と笑顔で語った。

 (名嘉一心)