東京五輪の空手形で金メダリストになった喜友名諒さん(劉衛流龍鳳会)ら、世界や日本で数々の王者を生み出している沖縄。一方の組手では長年、形の成績に水をあけられてきた。大阪生まれながら県内で組手の強化に励むのが、中高時代に4度全国の頂点に立った田丸太郎さん(23)だ。「空手発祥の地で組手を強くしたい」と浦添高などで外部コーチとして育成に力を注いでいる。
大阪の名門・浪速中2年で全国選抜個人、3年で全国選手権を制覇し、浪速高1、2年の時に全国総体団体優勝を成し遂げた。けがのため3年時は全国大会に出場せず、選手としては高校までで第一線を退いた。
泡盛の卸売りが家業だったことから、大学は沖縄国際大を選択。空手部の部員兼指導者として強化に取り組み、2022年の全九州大学選手権で団体3位入りを果たした。
「自分の経験を生かしたい」と大学在学中に那覇国際高を尋ね、自ら希望して空手部の外部コーチになった。その後、浦添高からも依頼を受け、昨年4月からは同校の外部コーチも引き受けている。大学卒業後は家業を継いで沖縄と大阪を行き来し、沖縄にいる時はほとんど毎日、学校に赴いている。
沖縄は組手で全国を制覇した経験者が身近にいないため、「トップを目指すイメージが湧きづらい」と指摘する。技術面の細かい指導もするが、全国で勝つためには「何が何でも上に行くというメンタルが大事だ」と強調する。「何かを得たいと思ったら、何かを犠牲にしないといけない。厳しい環境を自ら選んでほしい」と高い目標設定を求める。
惜しくも選出はならなかったが、浦添高3年の川村龍輝が全国のえりすぐりが集うジュニア強化選手選考会(4月26~28日、東京都)に参加するなど、教え子たちは着実に実績を残している。田丸さんは「全国で活躍する人が増えれば周囲も刺激を受ける。好循環が生まれてほしい」と展望を語った。
(古川峻)