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主将のげき 突破の力に 苦難越え決勝「意味ある」<キングス準優勝 激闘の軌跡>3


主将のげき 突破の力に 苦難越え決勝「意味ある」<キングス準優勝 激闘の軌跡>3 ファンと一緒の記念撮影するキングスの選手ら=1日、沖縄市のコザゲート通り(大城直也撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 屋嘉部 長将

 チャンピオンシップ(CS)決勝第3戦で広島ドラゴンフライズに敗れ、連覇を逃した直後の記者会見で、琉球ゴールデンキングスの桶谷大HCは「この結果で全て否定されるのは違う。ここ(決勝)に来たことが意味がある」と最後まで戦った選手たちとの軌跡を誇った。

 CS決勝までたどり着いたが、レギュラーシーズン(RS)は辛酸をなめた。天皇杯で歴史的大敗を喫した千葉ジェッツに、RSで2連勝するなど西地区7連覇に向けて勝利を重ねたが、終盤にライバルが立ちはだかった。

 特に名古屋ダイヤモンドドルフィンズには今季一度も勝てなかった。4月のアウェーでの2連戦。あと1勝で地区優勝が決まるキングスは、逆転優勝を信じる名古屋Dに連敗した。試合後、記者会見室まで聞こえる選手とファンの歓声に桶谷HC、今村佳太は悔しそうな表情を見せた。続く広島にも敗戦。最終盤の4連敗が響き、名古屋Dに逆転で優勝を奪われた。

 西地区2位となって挑んだCSは、優勝経験のあるチームが集う過酷なトーナメントの山に入った。

 準々決勝は連覇経験のあるアルバルク東京。第1戦はダブルオーバータイムまでもつれ込み、岸本隆一の3点弾で勝利を決めた。第2戦は負け、第3戦は1点差で勝利した。準決勝は千葉Jと顔を合わせた。第1戦は大敗したが、「しけた顔してバスケットするな」との田代直希主将のげきに奮起。第2、3戦は70点以下に抑え込み、決勝へ進出した。決勝は第1戦で広島を抑え込むも、第2、3戦と広島の堅守が上回り、連覇を逃した。

 RSはスリービッグなど手にした武器の多さが良くも悪くも勝敗を分けたが、CSはもともと持っている堅守が戻っていた。RS1試合平均失点の77・8失点からCSは70・4点と7点以上減らした。

 RSは負傷者が続出し、選手のケアや過密日程で練習時間が取れず、戦術の浸透に時間がかかった。さらに昨季の王者に対して、ほかのチームがさまざまな対策をして挑んできた。苦しみながらも7季連続でCS出場、直近3季は決勝進出と誇れる成績だ。

 桶谷HCは「スタートでジャック(・クーリー)がいなかったり、ヴィック(・ロー)が欠場したりと、誰かがいないくて自分たちの形を作れないシーズンだった」と振り返りながらも「CSに入ってみんなが我慢強くなり一体感を持ってプレーしてくれた。チームのために役割を果たそうとしてくれた」と、決勝進出の要因を語った。苦労や成果はファンも共有、沖縄市での報告会には約1万8000人が集まった。

 来季に向けたチーム作りはすでに始まっている。主将の田代や優勝時のCS最優秀選手のアレン・ダーラムらが退団し、桶谷HCや岸本と契約を継続する。沖縄バスケ情報誌「アウトナンバー」の湧川太陽編集長は、来季に向けて「守備の再構築が必要」と指摘する。桶谷HC体制となって以降、RS最多失点だった守備を課題に挙げつつ、「西地区首位を奪還し、CSホーム開催を確実にしてほしい」と期待を込める。

 CS決勝前の会見で意気込みを問われた岸本は「まくとぅそーけー、なんくるないさ」(正しいことをしていたら、なんとかなる)と答えた。今季も多くの準備をし、逆境の中で答えを探し続け、たどり着いた準優勝。岸本は「僕たちはこのような経験を経て強くなってきた。今まで以上に期待してほしい」と前を向く。先出し開幕からCS決勝まで、今季はどのチームより多く試合をし、ファンを楽しませたキングス。来季も「沖縄をもっと元気に!」の理念のもとに、ファンを、そして沖縄を楽しませてくれるだろう。(おわり)

 (屋嘉部長将)