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グラウンド使えなくても…陽明、逆境を力に 消えた「どうせ」の口癖 高校野球沖縄大会、あす22日開幕


グラウンド使えなくても…陽明、逆境を力に 消えた「どうせ」の口癖 高校野球沖縄大会、あす22日開幕 初勝利へ意気込む陽明高野球部のメンバー(提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 名波 一樹

 夏の甲子園出場への切符を懸けた第106回全国高校野球選手権沖縄大会が22日、沖縄セルラースタジアム那覇などで開幕する。優勝校は全国選手権大会(8月7日開幕、兵庫県・阪神甲子園球場)に派遣される。甲子園を目指して各校の球児の練習も本格化する。陽明は自校のグラウンドが使えない状況下にあるが、大会での勝利を目指し練習を続けている。

 陽明野球部の主な練習場所は校舎のピロティ。2020年から始まった校舎改築で、現在はグラウンドが使えない。完成は約5年後で、部員らはグラウンドを踏むことなく3年間を終える。新チームの公式戦での戦績は0勝。それでも気持ちを切らさず練習に励んできた。瀬底柊主将(3年)は「グラウンドがないことを言い訳にしたくない」と考えている。逆境を力に初の勝利を目指す。

ピロティで「羽打ち」を行う陽明高野球部のメンバーら=18日、浦添市の同校(名波一樹撮影)

 ピロティでは窓が割れないよう柔らかいボールでのノック、バドミントンのシャトルを使った「羽打ち」などを行う。時にはバスに乗ってバッティングセンターへ。環境が整っていないなりに、生徒らが自主的に工夫してきた。しかし、初めからチームの士気が高いわけではなかった。藤井智監督が赴任した4年前、部員らの口からは「どうせ陽明だから。どうせグラウンドがないから」という言葉がこぼれていた。「環境が変えられないなら心を変えるしかない」と鼓舞し、少しずつ部員らは変わっていった。「今は一言も(どうせと)聞こえなくなった。生徒らも成長したし、“待つ”ということを私も教わった」(藤井監督)

 部員は16人で、約半数は野球初心者。チームのそれぞれが入部当初は不安を抱えていたが、好きな野球に打ち込んできた。

 中学まで卓球部だった宮里流星(3年)は、休日にも走り込み「体力もついたし、捕球も誰にも負けない」と胸を張る。打線を引っ張る久貝柊也(2年)は「グラウンドがなくてもやれる、負けたくない」と強豪校など設備のある他校へ対抗心を燃やす。投手も務め、チームを引っ張ってきたのは瀬底主将。時には敗戦に涙を流した。「小学生から甲子園を目指してやってきた。全力を出し切りたい」と勝利を誓い、最後の夏に挑む。

 (名波一樹)