15、16の両日に豊見城高校で行われた九州高校総体の重量挙げに、沖縄にルーツのある松原尊(たつと)(福岡県・八幡中央高3年)と敬(あつと)(同2年)の兄弟が出場した。尊は67キロ級で3位入賞、敬は55キロ級でスナッチ、ジャーク、トータルで大会新を出し優勝した。
二人の父、誠さん(53)も学生時代から重量挙げに打ち込んだ。「一度も勝ったことがない」という相手は、現在本部高校で監督を務める比嘉敏彦さん(52)で全国高校総体や全日本選手権などで競い合ったライバルだった。誠さんの息子たちは、かつてのライバルが指導する天久星七(本部1年)と比嘉功(本部1年)と同階級でしのぎを削る。重量挙げが結んだ不思議な縁に、誠さんは「比嘉ちゃんたちを意識せざるを得ない。あちらより多く練習させて勝ちたい」と世代を超えたライバル関係がうかがえる。
誠さんの祖母、譜久島ヨシ子さん=伊良部島出身=は沖縄戦で戦火を避けるため、福岡県に疎開した。
沖縄で生まれたり、育ってはいないものの、沖縄のルーツを大切にする誠さんは、幼い息子たちを連れ、祖母の生まれ育った伊良部島を訪れたことも。誠さんの影響で重量挙げを始めた尊、敬は合宿などで沖縄を訪れており、今回の九州高校総体では「地元みたいな感じがある」(尊)と特別の思いを胸に試合に臨んだ。
67キロ級で比嘉功と激しい戦いを繰り広げた尊は、トータル229キロで2位の比嘉と並んだものの、比嘉の方が先に試技を成功させていたため3位に。「沖縄でみっともない試合をしてしまった」と悔しさをにじませた。
55キロ級の敬は天久が負傷欠場したため、直接対決はなかったものの、スナッチ92キロ、ジャーク110キロ、トータル202キロの大会新で頂点に立った。「天久選手がいる時に勝ちたかった。記録的にはまだまだ挙げられそう」とさらなる更新に自信を見せる。
尊と敬は、比嘉親子や天久と家族ぐるみの付き合いをしている。敬は「友達でもあり、いいライバル。天久選手がいなければここまで来られなかった」と言う。誠さんも「沖縄の地で誇りを持って戦えたのはよかった。次も全力を尽くし、悔いなく戦ってほしい。もちろん負けるわけにはいかない」と語る。
次回の2世代にわたるライバル対決の場は8月の全国総体だ。1年生から頂点を狙う天久や比嘉に対し、尊、敬は先輩としての意地もある。尊は「比嘉くんは力のあるライバルだが負けない」、敬も「ライバルの天久選手に勝つ。負けたくない」と意気込む。沖縄に特別な思いを抱く二人は、全国で頂点を狙う。
(屋嘉部長将)