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スイス・NGOイベント 沖縄の歴史、取り巻く環境を国連で強調 島袋純氏、ショーン・コナー氏が登壇


スイス・NGOイベント 沖縄の歴史、取り巻く環境を国連で強調 島袋純氏、ショーン・コナー氏が登壇 軍縮の必要性について話す国際平和ビューローのショーン・コナー事務局長=19日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 玉城デニー知事は19日にスイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれた、NGO市民外交センター主催のサイドイベントで、沖縄の地理や歴史、米軍による事件事故、基地から派生する環境問題、日米地位協定の問題点、名護市辺野古の新基地建設の大浦湾などへの影響について説明した。イベントの冒頭などで知事の国連人権理事会出席の意義などについて説明した島袋純琉球大教授と、登壇した国際平和ビューローのショーン・コナー事務局長の発言要旨、会場からの質問と玉城知事のやりとりについて紹介する。

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<登壇者 発言要旨>

自治体外交 緊張緩和に必要 ショーン・コナー氏(国際平和ビューロー事務局長)

 国際平和ビューローは1881年につくられた国際的なネットワーク。正義と平和を、そして暴力をなくすことを目的としている。玉城知事に詳細なプレゼンテーションをしてもらい、難しく重要な問題があること、沖縄県民が民主的で平和的なことを求めていると分かった。

 研究者によると、米軍は80カ国に750の基地を持っている。米国のNGOは(海外に)867基地あると考えている。アジア太平洋地域、特にこの東アジアには313の基地があると言われている。グアム、ハワイ、オーストラリア、フィリピン、韓国と日本。米軍基地があるところでは、同じような問題がある。例えば、グアムにはチャモロ族という先住民族がいるが、米議会には代表がいない。基地は島の3分の1を占有し、環境的な劣化にもつながっている。漁業や農業が難しい状態になっている。

 沖縄は米軍基地が集まっていて、県民の負担は重い。米軍基地は二酸化炭素を多く排出することもあり、気候変動に加担している。沖縄は島しょで影響を受けやすい。基地の存在で、環境も含め生活の質が落ちている。

 沖縄の米軍基地は例えばベトナム戦争やアフガン、イラクなどの戦争で使われた。米国の国際的なプレゼンスの重要な部分だ。米中間で緊張が高まっていることで、基地の役割も大きくなる。

 米中、あるいは同盟国と中国の間で間違いがあればエスカレーションにつながる。沖縄は最前線にあり、標的になりうる。中国、米国などが核兵器を所有していることを忘れてはならない。核兵器使用の脅威がある。

 安全保障のパラダイムシフトが必要だ。国際平和ビューローは国際的なパートナーなどと協力して、共通の安全保障を提唱している。日本と沖縄、米国、中国、地域のパートナーと組み立てていかねばならない。エスカレーションしないように、軍縮、外交が極めて重要になる。

 また地方自治体の外交が緊張緩和のために必要だ。取り組みを介して人権の侵害を軽減し、環境的な問題を緩和しないといけない。

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過度の基地集中 人権侵害 島袋純氏(琉球大教授)

玉城知事が国連で発言する意義などについて語る島袋純・琉球大教授

 なぜ知事が国連に来て話をしなければならないか。2006年にドゥドゥ・ディエン特別報告者の報告がされた。きちんと読むと、問題の根源がかなりはっきり分かる。報告によると、第一に沖縄は独立王国で、自己決定権を自ら放棄したことはない。日本に併合され、その後厳しい同化主義的な政策が行われた。戦後の過度の米軍基地の集中も歴史に由来する。不均衡な、過度の基地の集中がさまざまな人権侵害、自治権の侵害をもたらしている。

 日本政府はさまざまな支援をしていると言うが、基地の維持、強化が第一の目的で、それに従属するような支援体制になっている。それが沖縄の人権を放置し、自治権を侵害する原因になっている。司法に訴えても解決しないので、知事は国連に来て沖縄の人権と自決権の侵害について声を上げている。

 沖縄振興体制の研究が専門。沖縄振興の最大の問題は、予算編成権と計画の策定権が中央政府にあることだ。中央政府が自分の望むような形で補助するのが続いてきた。人、社会への投資より公共事業、土木工事への投資。施設は立派になるが社会福祉、貧困の問題が50年以上にわたって起こっている。

 歴代知事は振興計画の策定権を下さい、予算編成でもっと沖縄の意思を尊重してとお願いしてきた。10年前に振興計画の策定権は与えられた。しかし予算編成では権限がなく、政府の望む形で補助するというゆがんだ形だ。支援していると言うが、沖縄の本当の発展には結びつかない。今後さらに、よりひどい方向で沖縄の人や社会を育てるよりも軍事化を優先する予算編成に変わるのではないかと危惧している。