<金口木舌>一歩ずつ変えていく


社会
<金口木舌>一歩ずつ変えていく
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 「シンシューセイ?」。数年前に病を得て「侵襲性が高い」と言われる手術を受ける前、医療者との会話で初めて耳にした言葉だ

▼「侵襲」とは体を維持する機能にダメージを与えることだ。言葉の物騒な響きとともに、例えようのない心身の激痛を含むさまざまな痛みを経験した。静岡家裁浜松支部で先日あった審判の判断理由にその言葉を見た
▼審判は性別違和を持つ人に対し、性別変更のため「生殖不能」手術を求める性同一性障害特例法に違憲判断を下した。「生殖腺除去手術は、身体への強度の侵襲であり(中略)手術を受けるかを決める自由は憲法13条で保障される」が理由だ
▼生殖不能手術を要件とする同法への異議を司法が認めたのは国内で初めてという。国際的には手術不要の流れがとっくに進む。案の定、日本は何歩も遅れるが、静岡家裁から一歩を重ねよう
▼生き延びるための治療でもなく、ささやかな自由のために強要されねばならない手術などない。同様の家事審判に対して年内に出される最高裁の判断も次の一歩としたい。