<金口木舌>逆境を乗り越えてきた移民たち


社会
<金口木舌>逆境を乗り越えてきた移民たち
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 今年も「世界のウチナーンチュの日」がやってくる。昨年、世界中の県系人らが沖縄ルーツへの自覚や誇りを共有した場に立ち会った感動が思い出される

▼沖縄には多くの外国人も住んでいる。八重山に移り住んだ台湾の人々は時代に翻弄(ほんろう)され、苦難を味わった。1935年、60世帯が台湾から移住。激しい排斥運動に遭い、戦時中はパイン栽培が禁止された
▼廖見福(りょうけんぷく)さんは戦後の八重山のパイン再興に尽くした一人。未開の地だった名蔵ダム近くの山一帯をゼロから開墾した。1950年代半ばに缶詰生産はピークとなり、沖縄経済を支えた
▼その後、自由化で産業は衰退。廖さんの息子、島田長政さんは偏見や借金などの逆風を乗り越えてきた。集落に電気や水道が通ったのは島で一番最後。自力で道路も補修した。その自立心や助け合いに学びたい
▼島田さんは今、自衛隊配備を巡る住民投票訴訟の原告団として八重山の現状を見つめる。厳しい立場に置かれたからこそ、不条理には人一倍敏感になる。素朴な人柄に父親譲りの熱い不屈の魂を垣間見た。