<金口木舌>能書きのつかないところを


社会
<金口木舌>能書きのつかないところを
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 「権威とか権力とかに、おいそれとは恐れ入らない」。読売新聞を中途退社したジャーナリスト本田靖春さんは「社会部記者気(かた)質(ぎ)」をこう表現する。他紙の社会部記者の記事にそれを見たようだ。自著で紹介している

▼記者が老舗のかば焼き屋を訪ねた時のこと。「串打ち何年、一人前になるには年季が要って奥深い」という店主の長広舌が「気質」を揺さぶったらしい。注文の時、記者が吐いた言葉が痛烈だ。「何でもいいから、なるべく能書きのつかないところをくれ」
▼権威などものともしない。このエピソードに添えて、本田さんは「すかっとしませんか。このあたりがいかにも社会部記者なんだなあ」と記す。記者の気骨を感じさせる話だ
▼新聞週間が始まった。今年の代表標語は「今を知り 過去を学んで 明日を読む」。混迷の時代に切り込む記者気質とは何か、と考える
▼時流にやすやすと流れされず、饒舌(じょうぜつ)を振るうことなく、キリッとした記事を。往年の記者たちは口酸っぱい。その言葉を胸に刻み、読者と共に明日を読み解く。