<金口木舌>安全な場所からの眺め


社会
<金口木舌>安全な場所からの眺め
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 爆発音も悲鳴もない。無機質なコンテナ内で無人機を遠隔操作し、ボタン一押しで標的を一掃する。米国映画「ドローン・オブ・ウォー」(2014年)は「対テロ戦争」で多用された無人機に焦点を当てる

▼主人公は家族のいる自宅から空軍基地に毎日出勤し、アフガニスタンなどで飛ぶ無人機を操る。非対称戦争の象徴か。安全な場所から一方的な攻撃を仕掛けている
▼登場する無人機は「死神(リーパー)」の異名を取るMQ9。そう、嘉手納基地に配備された無人偵察機と同型機だ。相手に知られずに上空からミサイルで空爆できる。死神と言われて当然だ
▼「地元に対する事前の十分な説明が行われていない。基地負担軽減と逆行する」。地元説明から1週間で進められた嘉手納配備。県の沖縄防衛局への要請には怒りがにじむ
▼在沖米軍の増強につながる動きは常に米側の主張通り。一方的だ。民主主義国家を標榜(ひょうぼう)しながら、対話の扉を閉ざしてはいないか。安全な場所から眺めるだけでなく、負担を強いられる人々の訴えにも耳を傾けるべきだ。