<金口木舌>伝統行事受け継ぐ意志


社会
<金口木舌>伝統行事受け継ぐ意志
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 「外からの血」を伝統行事に入れるか否か。八重山への移住ブームが起こり始めた2000年代半ば、ある島の集落で、そんな議論が起こっていた

▼島から出て行った若者は戻ってこない。行事の簡素化まで話は及んだが、最終的に重要な役を移住者が担った。「郷(ごう)に入っては郷に従え」とする集落の人々と移住者との間で、思いの隔たりもあった
▼ことし本部町伊豆味の豊年祭で見た光景は対照的だった。2時間以上の演目に多くの区民が顔をそろえた。司会が出演者を読み上げ「移住して10年」「(ある家の)娘婿」と紹介した
▼元々の住人も移住者も、共に汗を流したのだろう。嵩原安彦区長は「人員確保に苦労したが、移住者も快く参加していただいた」と感謝し、融和的な雰囲気が会場を包んだ
▼名護市仲尾次区は130年以上、旧9月9日に毎年開催してきた豊年踊の日程を初めて変更し週末に開催する。「平日に仕事を休めない」とする若者の意見を取り入れた。少子高齢化時代、試行錯誤しつつ伝統を受け継ぐ意志を、やんばる各地で感じる。