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【深掘り】移植サンゴ9群体のうち7群体は死滅、それでも生育環境に「影響なし」 大浦湾の護岸工事に国自ら「お墨付き」


【深掘り】移植サンゴ9群体のうち7群体は死滅、それでも生育環境に「影響なし」 大浦湾の護岸工事に国自ら「お墨付き」 環境監視等委員会の会合に臨む委員や沖縄防衛局の職員ら=24日、那覇市内
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 名護市辺野古の新基地建設に向け、沖縄防衛局は24日の環境監視等委員会で、大浦湾側で移植が計画されているサンゴ類について、移植前に護岸工事を実施した場合の影響を調べたシミュレーション結果を示した。結論は「工事に着手してもサンゴ類の生息環境には影響がない」(防衛局担当者)として、護岸工事の先行実施に自ら「お墨付き」を与えた形だ。

 辺野古新基地建設工事を巡っては、今年4月、大浦湾側の埋め立てに使う土砂を辺野古側の既存埋め立て地に仮置きする土木工事の入札公告を実施した。

 9月には大浦湾側のA護岸新設工事の入札公告を行ったほか、大浦湾側の護岸工事に関する実施設計と環境保全対策の2件の協議書を県に提出するなど、大浦湾側の工事着手を見据えた動きを活発化させている。

 県関係者の一人は今回のシミュレーションについても、代執行訴訟で国が勝訴し大浦湾側の工事に着手できる環境が整った場合を見据えたものだと指摘。「(承認後)サンゴの特別採捕許可が出ていない期間も、できるところから工事を進める狙いだろう」と推察した。

 環境監視等委員会の中村由行委員長は、同日の会合で今回のシミュレーション結果について委員からは「今後水の濁り等をシミュレーションする際は適切なタイミングで計算条件などを資料に示すこと」と指導助言があったとしたが、工事の手順などについては特段の意見はなかったとした。

 一方、この日の委員会では、2018年に移植された絶滅危惧種のオキナワハマサンゴについて、移植後5年間行われたモニタリング調査の結果も報告された。

 移植された9群体のうち、現在も生き残っているのは2群体。このうち1群体は「全体的に白化」という生残が危ぶまれる状況だが、防衛局が示した最終的な評価は、移植先に元々生息していたサンゴの死亡率と同等であることなどを踏まえ「移植先において十分に順応している」などと総括した。

 これについて県関係者は、移植した9群体のうち7群体が死亡したことを念頭に「これを成功したと言えるのか。黒を白と言い換える国の姿勢が表れている」と疑問視。工事に前のめりな国側の態度に「(県が求める)対話で解決する姿勢は、みじんも感じられない」と懸念した。

 (知念征尚)