<金口木舌>「おとなしすぎるよ」


社会
<金口木舌>「おとなしすぎるよ」
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 「破天荒」という言葉は豪快で大胆な様子を指すかと思っていたら本来の意味ではないそうだ。元の意は「誰もできなかったことを初めて成し遂げる」。文化庁の「言葉のQ&A」にあった

▼とはいえ言葉の使い方は変わるもの。2008年の文化庁「国語に関する世論調査」で6割超の人が「豪快で大胆」の意味で使っていた。両方の意味で「破天荒」の文字が頭に浮かぶ人である
▼写真家の石川真生さんは「女に二言はない」と豪胆に宣言することで自らを追い詰め、創作意欲をかき立てる。2014年から取り組む「大琉球写真絵巻」は島の近現代史を総覧するようで斬新だ
▼東京で開催中の写真展会場で話を聞くと、そんな表現の現場にも危ぐがある。過去に一部作品が政治的とみられ、展示の妨害もあったという。かといっておじけづく石川さんではない。逆に縮こまっているメディアの方が不甲斐ない
▼「おとなしすぎるよ。怖がってばかりでさ」。石川さんの放つ言葉に押され、振り向いた。メディアが背負う「表現の自由」の看板は大丈夫だろうか。