＜金口木舌＞つられるわけにはいかない

　選挙カーで名前を連呼すると一定の集票効果があるという。ある研究者が兵庫県内の市長選挙を調べたという記事を読んだことがある。ただし好感度アップにはつながらないそうだ

▼こちらは「集票」もできず、思惑通りにはいかなかった。岸田文雄首相が所信表明で「経済、経済」と29回も発したという。減税を含む経済対策をよほどアピールしたかったか
▼防衛力強化の財源確保策で所得税などの増税方針を表明したのは昨年末。今になって一転、岸田首相は所得税減税を言い出した。あべこべの対応に国民は首をひねる
▼減税と言われても、その後に増税が控えていることを国民はお見通し。世論調査の内閣支持率は低迷している。首相の目論見（もくろみ）は外れたらしい
▼プライミング効果という心理学用語がある。「みりん」と10回連呼させ、すかさず「鼻の長い動物は」と問うと、つられて「キリン」とうっかり答える人がいる。岸田首相は自ら「経済、経済」と連呼したあげく、うっかり世論を見失ったか。国民は簡単につられるわけにはいかない。