<金口木舌>自然との共生


<金口木舌>自然との共生
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 先日、那覇のオフィス街をカニが歩いていた。人や車を警戒せず、アスファルトの上で怖がる様子もなかった。那覇は都市部だが海や川が近い。いろんな生き物がいてもおかしくない

▼人間は山を切り開き、海を埋め立てて生活圏を拡大した。自然の中に息づいていた生き物は、いや応なく人間の生活圏に取り込まれた。それでも環境に順応して命をつないでいる
▼県外ではクマによる人身被害が相次ぐ。環境省の速報値では過去最多のペースだ。市街地近くの森林で育ち、人間を恐れないクマが増えた可能性もあるという。餌を求めて市街地に出て、人間を攻撃することもあるのだろう
▼被害拡大でクマを駆除する動きもある。人間の命を守るためにはやむを得ないとの意見もあれば、野生生物をむやみに殺してはいけないという声もある。どちらの考えもうなずける
▼守るべきは人間と野生生物、両方の命だろう。山や海が身近にある沖縄でも自然との共生は避けては通れない課題になる。問題解決の方法を考え実践するのは、私たち人間の役割だ。