<金口木舌>植民地弾圧の歴史を見つめる


社会
<金口木舌>植民地弾圧の歴史を見つめる
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 10月末、英国のチャールズ国王が独立60周年を祝うケニアを訪問した。注目されたのは、植民地時代の独立運動の弾圧を謝罪するか否か。国王は「深い後悔の念」を示したが明確な謝罪はなかった

▼それでも歴史を正視する誠意を感じる。同じ頃、当方は台湾にいた。静かな渓谷に急峻(きゅうしゅん)な山が続く屏東県の山奥に「石門の戦い」の古戦場跡がある。1874年、帝国日本の覇権主義はここから始まった
▼日本政府は、71年に漂着した宮古島の役人らが現地の人々に殺されたことを、台湾出兵の口実にした。琉球の領有権を清に認めさせる目的があった。94年には日清戦争を経て日本への台湾割譲がなされた
▼人々が言葉を奪われ、親族が殺されるなど悲しい統治の歴史も聞いた。50年間台湾を植民地統治し、弾圧した日本は謝罪していない。どれだけ歴史を正視してきただろう
▼失われつつある文化の復興運動を進める台湾。土地に根づく豊かな文化は植民者の欲望に一時は屈しても、しなやかに再生を遂げつつある。沖縄が見習うべき姿かもしれない。