「ずっと編集者から連絡がないんだ。才能がないんだ」。そうやって落ち込む売れない小説家の夫に、妻は「私の愛する夫の悪口を言うのは誰?」と返す。メークをしながら片手間で、鏡越しにイタズラな視線を送る。言われた夫は少し笑顔で「でもだって」と食い下がるが、妻のしゃれた返しが続き、気づけば熱く激しいキス、そして抱擁。
フランス映画は、とにかく言葉の量が多い。どうでもいいようなことでも洗練されていて、文学的で、音楽のよう。きっとこれがフランスの文化。昔「愛を語るより口づけをかわそう」というJ―POPがはやったが、フランス映画を通して知る恋人たちは、口づけを交わしながら愛を語り続けている。そんな、言葉で知的に優雅に遊べる彼らに、争いは似合わない。
粋に夫を勇気づけた妻は、その日の夜、テロで亡くなった。夫と幼い息子を残して。
この物語は実話。そしてタイトルの言葉は、絶望した夫が、テロリストへ向けて送った言葉。監督はキリアン・リートホーフ。(桜坂劇場・下地久美子)
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テロリストへ送る言葉 ぼくは君たちを 憎まないことにした 桜坂劇場・きょうから
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琉球新報朝刊
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