まだメガネが大衆のものでなかった頃、メガネ作りに情熱を注いだ兄弟とそれを支え続けた妻の物語。「おしょりん」とは、田畑を覆う雪が固く凍った状態をいうそうだ。
いまや日本のメガネ95%を生産するという福井県。明治37(1904)年の福井の村は厳しい冬を迎え、収入源がなく、村の庄屋増永は冬の仕事はないものかと模索していた。そんな折、大阪で働く弟から「メガネの需要は必ず増していく。村の産業にしよう」と提案されるが、職人の育成、工場の準備と立ちはだかる壁は大きかった。
一つ一つ丁寧に問題を解決していく根気強い人々に応援を送るが、次から次への難題に「もう許してあげて」と祈りたくなる。だが自然の厳しさを常に感じながら生きる人々の粘り強さや折れない心に、いつしか励まされているのはこちらの方だ。
メガネが単なる視力矯正の道具でなく、人の身体の一部になるようにと心砕く職人たちの姿勢にこみあげてくるものがある。監督は児玉宣久。
(スターシアターズ・榮慶子)
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琉球新報朝刊
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