飲酒が止まらず、数々の失態で家族も傷つけていたTakさん。自分の酒依存を認め、回復の道を歩み始めます。
二つ目は、アルコール専門病院に入院した私が脱走し、行方不明になった時の妻の言葉である。
2日間音信不通だった私。病院に戻った後、妻から罵倒されることを覚悟して電話した。妻の言葉は「へー、まぁケガしなくて良かったね」だけだった。
今までのように、「なんで」「どうして」「何考えてるの」と、嵐のような言葉で責め立てられることを覚悟していたのに。その時の私は「見捨てられる」という恐怖を感じた。
「少なくとも妻は変わろうと必死に努力している。なのに俺がこのままだったら間違いなく俺はズタボロになって一人きりで哀れに死ぬ」。そう感じた。だからこそ抜け出したいと強く思えた。
今現在、医療だけでなく自助グループにつながり、参加するだけでなく、運営にまで携わっているので、とても幸せな日々を家族とともに過ごせている。と同時に、酒を飲んでいた時にはいかに多くの幸せや楽しみをないがしろにしていたのか、そう気付くようになった。だが、われわれ依存症者はその幸せを一瞬で投げ出せる。放り出せる。だからこそ私はこれからも「アルコール中毒患者のTakです」と、自分自身に言い聞かせていこうと思う。
最後に、この文を読んでいて飲酒が止められずに苦しんでいる、あるいは、家族を苦しませている方々に強く伝えたいです。
酒を飲んでる瞬間の高揚感、解放感は確かに素晴らしいことは、僕も十分すぎるほど知ってます。ですが、あなたの周りにはそんなものよりもはるかに素晴らしい幸せや楽しみが数えきれないほどあふれています。ぜひ、その幸福を取り戻すために自助グループへの参加を考えてみてください。
きっと、酒に振り回されずに素晴らしい人生を歩んでいる仲間に会えます。依存症当事者、家族、周囲の皆が幸せになれますよう。切にお祈りしています。
(前回は10月14日に掲載しました)