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温暖化、マリモの表層薄く/神戸大など/水温上昇が悪影響


温暖化、マリモの表層薄く/神戸大など/水温上昇が悪影響 北海道釧路市・阿寒湖
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 特別天然記念物である北海道釧路市・阿寒湖のマリモが地球温暖化の影響を受け、表層が薄くなった可能性があることが神戸大などの研究で分かった。MRI解析でマリモの成長、分解と水温の関係を試算し、過去35年ほどで表層の厚さが約1センチ減って「痩せた」と導き出した。研究チームのメンバーは「寒い地域の希少種にも温暖化の影響が強く及んでいる」と指摘した。
 マリモは細い藻が球状に集まったもので、大きくなると中心に空洞を形成し、表層の厚みは4~5センチとなる。阿寒湖は世界で唯一、直径20センチ以上の巨大マリモが群生するが、近年は温暖化で水温が上昇。マリモへの悪影響が懸念されてきた。
 釧路市教育委員会マリモ研究室の尾山洋一次長によると、1988年の夏の最高水温は23度程度だったが、近年は27度に達する年もあり、夏が終わってもなかなか水温が下がらないという。
 研究チームは、マリモを暗所に置いて水温と藻の密度を観測。人間が脂肪を燃焼させるように、マリモは光合成ができないと栄養を生み出すために分解するが、その速度は水温が上がるほど速まることを発見した。
 そのデータと、MRI解析で算出したマリモの光合成による成長速度を合わせると、88年の水温では約4・7センチだった厚さが、近年の水温では約3・7センチとの試算結果が出た。今後も水温が上昇すれば、マリモが壊れやすくなるという。
 厚さを保つには夏の最高水温が24度程度になる環境が望ましいとの結果も出た。尾山次長は「理想の水温を把握できたのは保護活動の観点で前進」としつつ、危険性を知らせる「炭鉱のカナリア」にマリモをなぞらえ「急速な温暖化の危機を感じさせる」と語った。