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最低賃金格差 15円拡大 過去10年 労働者 都市流出懸念


最低賃金格差 15円拡大 過去10年 労働者 都市流出懸念 最低賃金の最高額と最低額の推移
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 働く人の賃金の下限額を地域ごとに定めた最低賃金は10月、全国の平均時給が千円を超えたが、地域間格差は最大220円になった。格差がこの10年で15円広がり、賃金の高い都市部に労働者が流出し地方の人口減に拍車がかかると懸念される。引き上げの目安額を経済情勢に応じて都道府県別に示すランク制度見直しを求める声もある。
 最低賃金は国の審議会が目安額を示し、各都道府県の審議会が目安額を踏まえ引き上げ額を決める仕組み。毎年度改定される。大都市と地方との差をつきにくくするのを目的に本年度、国の審議会は都道府県のランクを前年度までのA―DからA―Cに縮小した。
 本年度の最高は東京の1113円、最低は岩手の893円で差は220円に。この10年間でみると、2013年度は最高の東京の869円と最低の沖縄など9県の664円で差は205円。23年度までに15円大きくなった。19年度以降は地方の目安額上積みなどで若干格差は縮んだ年があったものの、これまで拡大してきた格差の解消には至っていない。
 格差拡大の原因は、ランク制度そのものにあるとの指摘がある。目安額を示さなかったコロナ禍の20年度などを除き、都市部のAの目安額を高く、地方のCやDを低くしたため差が出てきた。
 全労連はランク制度を廃止し、全国一律とすることを要求。来年の通常国会で関連法の改正に向け超党派による法案提出を目指している。
 東京大の神吉知郁子教授(労働法)によると、最低賃金を地域別に決める先進国はほとんどない。ただ年齢や就労状況などに応じて複数の最低賃金を設けることもある。
 神吉氏は地域間格差による懸念は近年強まっているとして「働く人の賃金が県境をまたいで差がつく現状に疑問を持つ人は多い。最低賃金の決定方法を再検討すべきかもしれない」と指摘する。