都道府県ごとに最低賃金が異なる現状で、より高い賃金を求め自治体を越境する人がいる。地方では本年度、人材の流出を防ごうと、国が示した引き上げ目安額にさらに上乗せして「自衛」するケースが相次いだ。しかし、依然として差は大きく開いたままだ。
「暮らしに余裕が出た」。昼時には店外まで客が並ぶ、福岡県久留米市にあるラーメン店で今年5月からパートで働き始めた佐賀県鳥栖市の女性(35)は喜んだ。
女性は県営住宅に住みながら食べ盛りの男の子3人を育てるシングルマザー。鳥栖市内のホームセンターで働いていたが、時給は870円。当時の佐賀県の最低賃金の時給853円に近い待遇で、隣県の福岡県の900円も下回っていた。移った先のラーメン店では時給1020円。初めて給与明細を手にし「めちゃくちゃテンションが上がった」と振り返る。
こうした働き手の移動を巡り、最低賃金の引き上げ額を話し合う本年度の佐賀県の審議会では労働者側が「福岡との差額を少しでも縮めないと流出が続く」と危機感を強調。国が示した引き上げ目安額は39円だったが、全国最大の8円を上乗せして時給900円になった。時給941円となった福岡県との差は前年度より6円縮んだ。
本年度は佐賀県を含め24県が目安額に上乗せした。目安額を「度外視」した動きで、人口流出に対する国と地方の意識の違いを浮き彫りにした。
有料
高い賃金求め越境 地方、上乗せも差大きく
![高い賃金求め越境 地方、上乗せも差大きく](https://ryukyushimpo.jp/tachyon/2023/11/RS20231111G00499010100.jpg)
この記事を書いた人
琉球新報朝刊
![Avatar photo](https://ryukyushimpo.jp/uploads/2023/09/favicon-21x21.png)