「ぼくは君たちを憎まないことにした」と同時に公開した本作。この2作品、偶然にも、テロを扱っているという点で共通している。ただ、テロ以外全部違う。
実話をもとに、テロで家族を失った人々の悲しみに寄り添う優しい映画「ぼくは君たちを……」に対し「デシベル」は、今まさに爆弾テロを回避できるか否かのスリルを楽しむ超娯楽作。「デシベル」の世界の中では、犠牲者に思いをはせたくても、多すぎて心が及ばない。主人公はどんなにけがをしても、また立ち上がるのが当たり前で、とにかく最後のでっかい時限爆弾を、時間内に止める!という使命感に支配される。そして、爆発阻止というカタルシスは、来ると分かっていても爽快。
その勢いのまま「ぼくたちは……」を鑑賞すると、さっきまで痛みに対して鈍感になっていた己に気づく。登場人物1人の死が、いつも以上に心に重い。そして、映画に心を翻弄(ほんろう)されているこの状況が、たまらなく心地いい。監督はファン・イノ。(桜坂劇場・下地久美子)
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デシベル 桜坂劇場で公開中 爆弾テロ阻止のスリル
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琉球新報朝刊
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