近所に1本だけ真綿のような白い花を咲かせるトックリキワタの木がある。周りは「普通」のピンク色を咲かせる木がずらり。人は白い花を褒めそやす。1本だけ違ってすがすがしいと。
映画「正欲」には「普通には生きられない」と自覚する若者がでてくる。多くを望むわけではないのに社会の「普通」にくみすることができないから、自分の存在を持て余しさまよう。
私は差別主義者でもないし、ジェンダー平等にもLGBTQにも理解を示し…。などと、通り一遍のご託を並べながら観ていると、自分の想像力の貧弱さに戦慄(せんりつ)することになる。
希少種が珍重されリスペクトされるのは動植物の世界だけで、人間は同じであれ、普通であれ、規則正しくあれと閉じ込められる。
そんな社会で生きるため、ひりつくような緊張と閉塞(へいそく)感をまといながら呼吸する人たちがいるという事を、忘れずにいたい。監督は岸善幸。
(スターシアターズ・榮慶子)
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正欲 シネマライカムで公開中 「普通」に閉じ込められ
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琉球新報朝刊
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