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公判なく「本質見えず」/ゴーン被告逮捕5年 日産前社長が批判


公判なく「本質見えず」/ゴーン被告逮捕5年 日産前社長が批判 インタビューに答える日産自動車の西川広人前社長
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 日産自動車元会長カルロス・ゴーン被告(69)が逮捕されて5年になるのを前に、同社の西川広人前社長(70)が18日までに共同通信のインタビューに応じ、国外逃亡による被告不在で公判が開かれない現状を「このままでは犯罪の本質が見えてこない」と批判した。日産の資金を私的流用したとする不正を招いた要因の一つに、同社のガバナンス(組織統治)の形骸化を挙げ「トップの不正が発覚しにくい土壌をつくってしまったかもしれない」と述べた。
 ゴーン被告は2018年11月19日、役員報酬を過少記載したとする金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で、元代表取締役グレゴリー・ケリー被告(67)と共に東京地検特捜部に逮捕された。部下2人が地検と司法取引していた。ゴーン被告は会社法違反(特別背任)罪でも逮捕・起訴され、保釈中の19年末にレバノンへ逃亡。記者会見などで「クーデター」と日産を繰り返し批判している。
 西川氏は事件発覚時の社長。インタビューで、18年10月に内部調査の報告を受けるまで「不正を全く認識していなかった」と説明した。
 日産とフランス自動車大手ルノーが資本提携し、ゴーン被告が日産の最高執行責任者(COO)に就いたのは1999年。当初は「着実に仕事をするリーダーという印象だった」とし、大胆なコストカットで日産の業績がV字回復した後も、ルノーではなく日産代表の立場を貫いたと話した。
 ところが、評価が高まるにつれ変化も見られるように。西川氏は、00年代半ばから「日産に使う時間が減り、アライアンス(提携)の強化に走りやすくなった」と明かした。事件については取締役会が実質的な議論を避けるなど近代化が遅れ、結果的に不正を防ぐ機能を果たせなかったと語った。
 西川氏は、特別背任事件は「明らかな着服。そこを明らかにしないと本質が見えない」と強調。その上で「日本の経営者ができないことをやった。正のレガシー(遺産)として伝えるためにも自分のやった負の部分を認めた方がいい」と呼びかけた。