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減税裏目、首相「袋小路」 報道各社、内閣支持20%台 政治とカネ、新たな火種


減税裏目、首相「袋小路」 報道各社、内閣支持20%台 政治とカネ、新たな火種 報道各社の月世論調査
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 岸田文雄首相の政権運営が袋小路に陥っている。報道各社の世論調査で内閣支持率は軒並み20%台を記録。減税を盛り込んだ経済対策も低評価で、政権浮揚の切り札との期待は裏目に出た。与党内では「末期的」との悲鳴が上がる。首相は2023年度補正予算案の早期成立で再起を狙うが、自民党5派閥に「政治とカネ」問題が浮上。新たな火種となりそうだ。
 「減税に『選挙目当て』という悪者イメージをすり込まれてしまった」
 20日朝、官邸。首相周辺は各社調査に目を通すと天を仰いだ。特に痛いのは経済対策に関する結果だ。30年続くデフレから完全脱却するための「起爆剤」として自信を持っていたのに、各社とも「評価しない」が「評価する」を大きく上回った。意図が伝わらないもどかしさが官邸に漂う。
 午後の衆院本会議では、立憲民主党の鎌田さゆり氏が、減税の元手はないと説明した鈴木俊一財務相と、「税収増を還元する」とした首相の発言に齟齬(そご)があると迫った。首相は「国民から見れば、新型コロナウイルス禍に納めた税金が戻ってくるという意味で還元そのものだ」と反論したが、明快さを欠いた。
 官邸筋は「来年の春闘で賃上げが実現するまで耐えるしかない」と説く。防戦を余儀なくされる首相に対し、立民の安住淳国対委員長は「支持率は下げ止まっていない。自民1強の中で経験したことのない状況だろう」と意気軒高だ。
 窮地の首相を巡り、自民では、故青木幹雄元自民参院議員会長が唱えた「方程式」への意識が徐々に高まる。内閣と自民の支持率の合計が50%を割れば政権は持たない―という一種の物差しだ。今月の共同通信調査は計62・4%だが、一部では5割を切った。
 ある自民ベテランは「菅政権末期と酷似してきた」とも指摘する。21年8月の共同通信調査で、菅内閣の支持率は31・8%に低下し、不支持率は50・6%。求心力を失った菅義偉前首相は退陣の道を選んだ。一方、今月調査で岸田内閣は支持率28・3%。自民の12年の政権奪還後最低で、不支持率56・7%も際立つ。
 自民筋は「政権が持つ、持たないではない。誰が、いつ『ポスト岸田』レースの号砲を鳴らすかだ」とささやく。首相に近い政権幹部は「一喜一憂どころか、一喜できる要素すらない」と頭を抱えた。
 弱った政権にとって、新たな不安の芽は、首相率いる岸田派を含む自民5派閥の政治資金問題だ。政治資金パーティーの収入を18~21年分の政治資金収支報告書に約4千万円分過少記載したとする告発状を受け、東京地検特捜部が派閥担当者らを任意聴取したことが判明した。20日朝、記者団から対応を問われた首相は、捜査中を理由に「コメントは控える」とだけ語った。
 一方、安住氏は自民の高木毅国対委員長との会談で「予算委員会で聞かせてもらう」と宣告。追及へ手ぐすね引く。最大派閥安倍派の若手は顔を曇らせる。「首相や閣僚は国会で明瞭に答弁できないだろう。国民に疑惑の形で残ってしまう」