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国庫負担3.3兆円増/国民年金/2060年度、国試算 給付水準維持に必要


国庫負担3.3兆円増/国民年金/2060年度、国試算 給付水準維持に必要 基礎年金の国庫負担追加試算
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 厚生労働省は21日、国民年金(基礎年金)の給付水準を維持するため、保険料の納付期間を65歳になるまで延長するなどの制度改革を実施した場合、給付財源の半分を賄う国庫(税)負担が2060年度に追加で3兆3千億円必要になるとの試算を明らかにした。25年通常国会への関連法案提出を検討する。財務省は国の借金を増やさずに済む安定財源がなければ追加支出を認めない立場で、財源確保が課題となる。
 国庫の追加負担は40年度時点で1兆7千億円、50年度で3兆2千億円必要となる。社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の部会で試算を示した。少子高齢化に応じ、物価や賃金の上昇分より年金額の伸びを抑制する「マクロ経済スライド」という仕組みがあり、基礎年金の給付水準は将来、3割程度目減りする見通し。厚労省は改革を実施して目減りの緩和を図る。
 試算の前提となる改革は二つ。一つ目は、保険料の納付期間を現行の「20歳以上60歳未満」の40年間から、65歳になるまでの45年間に延長する。年金額は増え、国庫負担も増える想定。経済成長が標準的なケースで、国庫負担は60年度に追加で1兆3千億円かかる。
 二つ目は、マクロ経済スライドによる抑制を前倒しで完了させる措置。給付水準の目減りは緩和されるが、国庫負担は追加で2兆円必要となる。
 試算では、現役世代の平均手取り収入と比べた基礎年金の給付水準は、19年度は36・4%。現行制度のままでは46年度に26・5%まで低下し、約3割目減り。二つの改革を実施すれば、33年度に37・0%へ改善する。
 この日の部会では制度改革に関し「将来世代の年金水準を上げるため、いち早く取り組むべきだ」など理解を示す意見が相次いだが、財源確保を懸念する声もあった。