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財源確保の議論不可避/「老後の柱」減歯止めへ


財源確保の議論不可避/「老後の柱」減歯止めへ 基礎年金給付水準の目減りイメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 国民年金(基礎年金)の保険料を納付する期間を5年間延長し65歳になるまでの45年間とするなど「老後の柱」である基礎年金の水準目減りに歯止めをかけるための検討が進む。少子高齢化を踏まえ、将来世代の受給水準を維持する狙いだ。厚生労働省は21日、国庫負担が2060年度に追加で3兆3千億円必要になるとの試算を公表。かなり先のデータだが、いずれは財源確保策の議論が不可避となる。
 「就職氷河期世代は不本意ながら非正規雇用となった人が多い。一定水準の年金を確保することは重要だ」「今すぐ必要はなくとも、財源をどうするのか。極めて難易度が高い」。東京都内で同日開いた社会保障審議会の部会では、委員から基礎年金の水準を下支えする必要性に理解を示す声があったものの、課題の指摘が相次いだ。
 日本の公的年金は国内に住む20歳以上60歳未満の全員が入る「共通の土台」である基礎年金(1階部分)と、会社員や公務員らが加入し上乗せされる厚生年金(2階部分)がある。現役世代の保険料をその時の高齢者の給付に充てる「仕送り方式」だ。想定を超す少子高齢化の加速で、保険料を納める現役世代が急激に減り、長生きする高齢者が増えて年金を受け取る期間は長期化する。
 年金財政の安定化と将来世代の年金原資確保に向け、04年の制度改革で「マクロ経済スライド」を導入。保険料の上限を固定し、年金の改定額を物価や賃金の上昇分より抑える仕組みだ。デフレ下では実施しないルールのため、これまで適用は4回。その結果、現在の高齢者への給付水準が想定より高くなり、その分、将来の給付水準が目減りする要因となった。
 23年度の基礎年金の保険料は月1万6520円で、40年間納付した人は月約6万6千円を受け取れる。保険料の納付延長が実現した場合は単純計算で、基礎年金の受給額は23年度比12・5%増の月約7万4千円となる。国民年金に加入する自営業者や60歳以降に働かない人らは負担が長引き、支払う保険料は5年間で計約100万円増える。
 与党関係者は「国費を入れるからこそ納付期間延長に納得する人もいるはず。安定財源確保は不可欠だ」と指摘する。
 政府内には「将来的には消費税の引き上げしかない」(省庁関係者)との意見がある一方で「増税は社会経済情勢を勘案して検討すべきもので、急ぐべき状況にはない」(与党筋)との声は根強い。