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「働くデイ」生き生き/介護利用者ら軽作業/琉新の風 糸満/「できる喜び」機能維持へ


「働くデイ」生き生き/介護利用者ら軽作業/琉新の風 糸満/「できる喜び」機能維持へ 「働くデイ」の活動で、自分たちが使った部屋の掃き掃除をする利用者 =13日、糸満市大度の「琉新の風 糸満」
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 糸満市にある介護事業所「琉新の風 糸満」(兼島樹社長)では4月から、高齢者の生きがいづくりや自立支援をサポートする通所介護(デイサービス)のプログラムとして、「働くデイ」を導入している。利用者の介護度や体調に合わせて掃除や畑仕事などの軽作業に参加してもらい、ポイントをためて施設内通貨として利用できる仕組み。同事業所では「利用者の表情が生き生きしてきた。身体機能の維持にもつながっている」など効果を実感し、系列の別事業所でも10月から取り組みを始めた。

 同事業所の「働くデイ」は、利用する高齢者19人がデイサービスに通所した後、入浴や食事、機能訓練の合間や終了後の活動として実施している。テーブル拭きや掃き掃除、洗い物といった身の回りのことを担当してもらうほか、農作業や制作物、大工仕事など、利用者の「やりたいこと」に取り組んでもらい、職員が見守りながらサポートしている。
 「仕事」に合わせてポイント数が決まっており、利用者は働いた分のポイントを各自のカードにため、60ポイントになったら施設内通貨に交換して、500円相当の日用品や施設内イベント時の屋台の支払いなどに利用できる。
 導入のきっかけは「利用者の姿」だったという。以前はレクリエーションとして、リズム体操や昔遊びなどを提供していたが、利用者の退屈そうな姿や、「子ども扱いされている」といった声があったという。
 デイサービス管理者の亀井綾佳さん(25)が「もっと楽しく生き生きと過ごしてもらいたい」と悩んでいたところ、同じように「『やってあげる介護』から脱却したい」と模索していた管理者兼サービス提供責任者の玉城博輝さん(38)が「働くデイ」に取り組む県外の事例を知り、3月ごろから職員間で話し合いを重ね、4月にスタートした。
 当初は利用者から「職員の仕事を押し付けるのか」との声や、職員からも「年老いた人に仕事をさせるのか」との意見もあった。そのたびに亀井さんらは「できることを奪っていないか。『できる喜び』を感じてもらおう」との思いを説明。利用者から「遠出をしたい」「沖縄美ら海水族館に行きたい」などの要望も踏まえ「美ら海は広いから動いて体力をつけなきゃね」と利用者のモチベーションを高めつつ、取り組みを進めてきた。
 変化は1カ月もたたずに表れたという。利用者の表情が生き生きし始め、積極的に動いてくれるように。亀井さんは「施設内でのよろめきも徐々に減り、機能維持につながっている」とうれしそうに話す。
 「棚を作ってくれた元大工さんや畑仕事の達人、掃除のこつを教えてくれる方もいる。利用者さんのために始めたけれど、私たち職員が教わることや助けられることが多い」
 13日の同事業所の屋外。子どもの頃から野菜を育てていたという80代の女性は、畑を耕しながら「少し前まで草ボーボーだったよ。ニンジンやタマネキを植えようかね」と笑顔。並里竜太郎さん(77)は「家に帰っても畑のことを考えるさ。自分で色んなことができるのは難儀だけど楽しいね」と語ってくれた。
 玉城さんは「今できることより、少し難しい半歩先のことをやってもらう方が効果的だと感じる」と説明。「ありがとう」の声かけを何より大切にしているという亀井さんは「その人が本当にやりたいことを引き出したい。状態に合わせて工夫すれば、どんな方でも参加できる。生きがいを感じてもらえる取り組みだと思うので、多くの事業所に広がってほしい」と願いを込めた。
 (佐藤ひろこ通信員)

「働くデイ」の活動で、自分たちが使った部屋の掃き掃除をする利用者 =13日、糸満市大度の「琉新の風 糸満」