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別れは双方の成長 ルー、パリで生まれた猫 シネマプラザハウスで公開中


別れは双方の成長 ルー、パリで生まれた猫 シネマプラザハウスで公開中
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 猫の湯たんぽのようなぬくもりが膝の上によみがえり、家出(?)した猫を探し回る幼い頃の子どもたちの声が聞こえたような気がする。
 10歳の少女クレムが猫のルーと会ったのは両親が毎夜いさかいを繰り返す日々の中。両親とも自分を愛してくれるのに、一緒に暮らせない理由が彼女には理解できない。理解の範疇(はんちゅう)を超えた寂しさといら立ちをただ、ただ、小さないきもののぬくもりが受け止め、なぐさめる。意志を持って演技しているかのような動物たちの動きは、豊かでエネルギーにあふれている。出会ったものにいつか別れが訪れるのは当然のことで、映画はそれを双方の成長と捉える。
 「相手の幸せを願って離れる」ことを、少女は精神の成長で知り、一歩大人の階段を痛みとともにのぼる。冒頭の猫の失踪事件で、泣きながら猫の名を連呼する子どもたちをしりめに、去勢手術やノミ取り薬にかかった費用を悔やんだ自分の心根をうんと叱っておこう。監督はギョーム・メダチェフスキ。(スターシアターズ・榮慶子)