ルール守れぬ人々　桜坂劇場で来月８日公開　ＶＯＲＴＥＸ　ヴォルテックス

　散歩中、自転車に後ろからチリンチリンされ、激怒した自分に驚いた。昔は怒らなかったのになぜ？　ホルモンバランス？　いいえ、「自転車で歩道を走ってはいけない」というルールができたから。「ルールを守れ！」とキレる自分が「締め切り」という名のルールを破っていることにはたと気づく。あーあ、ルールはなぜ存在するのか。そして、なぜ守れないのか。
　「ヴォルテックス」は「常識」を含む「ルール」を、どうしても守れない人たちの物語。
　主人公の老夫婦は２人暮らし。妻は認知症を患い、介護すべき夫は不倫に忙しい。本能に歯止めの利かない２人の老人は自身の命を守るためのルールすら守ることができない。頼りの長男も、なんかいろいろダメそう。結果、加速度的に迫る２人の死期に、誰も手を差し伸べることができないまま、カウントダウンが進んでいく。その様子がとんでもなく怖い。そういえば、ホラー映画は、主人公がルールを破るところから始まる。監督はギャスパー・ノエ。（桜坂劇場・下地久美子）