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財産保全、審議論点に 旧統一教会 与党「信教の自由」抵触懸念


財産保全、審議論点に 旧統一教会 与党「信教の自由」抵触懸念 宗教法人の財産保全を巡る各党の主張
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の財産流出を防ぐための関連法案が、国会で審議入りした。立憲民主党、日本維新の会や全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は財産の一括保全を求める一方、与党などは憲法に抵触する恐れがあるとして見送った。今後の議論で大きな焦点になるとみられるが、具体的にどこが憲法上のハードルになりうるのか。
 「野党案は実例がなく、実効性に疑問。信教の自由にも懸念がある」「相当多数の被害があり、賠償資金がなくなっていく事態は防ぐべきだ」。24日の衆院法務委員会で、与野党の議員が財産保全を巡って意見をぶつけ合った。
 立維案は、解散命令請求後、裁判所が判断を示す前の段階で宗教法人の財産を保全できるとする。同様の規定は会社法にあり、解散命令の申し立てがあった場合、裁判所は「決定があるまでの間、会社の財産に関し、管理人による管理を命ずる処分その他の必要な保全処分を命ずることができる」と定められている。
 これに対し、特例法案を共同提出した自民・公明両党と国民民主党は、信教の自由との関係で慎重な姿勢だ。憲法20条が定める信教の自由は、表現の自由などと並び「精神的自由権」と位置付けられ、人権の中でも特に重要な権利と考えられている。
 特例法案を中心となってまとめた自民の山下貴司元法相は取材に、こうした精神的自由権の制約には、より制限的でない他の手段がないなど厳格な合憲性の審査基準があるとし「信教の自由とのバランスを考えなければならない」と説明する。
 一方、全国弁連は17日の声明で、同じく精神的自由権の「集会・結社の自由」に関わる一般社団・財団法人法に言及。解散命令請求を受けた場合の包括的な財産保全措置は内閣法制局や国会で合憲と判断されたとし、宗教法人の財産保全は「憲法違反となる理由は見当たらない」と指摘した。
 近畿大の田近肇教授(憲法学)は「財産を動かせなくなると宗教活動がやりにくくなる面はあるが、活動そのものを規制するわけではない。立維案でも憲法違反にはならないだろう」とみる。その上で「違憲性が争点になって保全の可否の判断が長期化する可能性はある。そうであれば、自公国案の方が実効性が高いとの見方もできる」と話した。