自民党5派閥がパーティー収入の過少報告を刑事告発され、神経をとがらせている。
政治資金規正法は、20万円を超えるパーティー券購入を政治資金収支報告書に記載するよう義務付ける。なぜ記載は漏れたのか―。窓口となる議員が複数に分かれるためだと派閥側は説明。裏金づくりとの疑念払拭に躍起になる。
食い違い
5派閥に突き付けられたのは、政治資金パーティーの収入を2018~21年分の収支報告書に過少記載したとする規正法違反(不記載・虚偽記入)容疑だ。当時の会計責任者らを対象とし、神戸学院大の上脇博之教授が東京地検に告発した。
派閥の収支報告書の収入欄と、パーティー券を購入した政治団体側の支出欄を突き合わせた結果、食い違いが判明したというもの。架空の支出記載は考えにくく、派閥側の未記載が疑われるというわけだ。不足額は安倍派の約1900万円を筆頭に二階派、茂木派、麻生派、岸田派に見つかり、計約4千万円に上る。
東京地検特捜部は任意で担当者を聴取している。国会で追及を受けた岸田文雄首相は、各派閥に対応させるよう茂木敏充幹事長に指示した。
5派閥はそれぞれ事務的ミスだと説明。収支報告書の訂正を提出したという。
名寄せ
「事務的ミス」とはどういうことか。
各派閥は1枚2万円が相場のパーティー券の販売ノルマを所属議員に課す。当選回数や閣僚経験が増えれば、ノルマ枚数も多くなる。競うように販売し、同一の企業・団体が複数議員から依頼されるケースが出てくる。このため個別には20万円以下でも、購入した側は計20万円を超え、この名寄せができなかった―各派閥はこう説明する。
だが告発状によると、政治団体側の支出には1回で20万円を超える記載も複数見つかっている。
議員がパーティー券を懸命に売る背景には、ノルマを超えた売り上げが派閥から「キックバック」され自身の収入になる仕組みがあるようだ。
中堅は「わが派では還元と呼んでいる」と明かす。逆にノルマに届かず、自腹を切る例も聞かれる。
裏金づくりの仕掛けも潜んでいるとされる。例えば、企業・団体が購入費を銀行振り込みで派閥に直接支払うのでなく、議員が介在する事例。議員側には付き合い先を同僚に知られたくない心理があるようだが、金銭の授受を収支報告書に明記しなければ、出入り不明の裏金になり得る。
パーティー券は寄付でなく対価に当たり、購入者側は個人や企業なら公に報告する義務がない。
氷山の一角
「氷山の一角ではないか。継続的、構造的に行われてきた可能性がある。責任を持って解明する覚悟を示してほしい」。22日、立憲民主党の野田佳彦元首相は衆院予算委員会で首相に迫った。二階派は24日、急きょ秘書研修会を開き、規正法ルールの周知を徹底した。
パーティー収入の不記載では昨年12月、自民の薗浦健太郎氏が衆院議員を辞職し、略式起訴された事件が記憶に新しい。
関係者は固唾(かたず)をのんで今回の捜査の行方を見守る。