有料

行政のデジタル化へ奮闘 東京都 官民協力組織が始動 人材確保へ自治体連携も


行政のデジタル化へ奮闘 東京都 官民協力組織が始動 人材確保へ自治体連携も 「GovTech東京」の職場 =9月、東京都新宿区
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

地方自治体による行政のデジタル化の取り組みが盛んだ。東京都では、推進役となる官民協働の外部団体が始動。他県でも、課題となる専門人材の確保で市町村と連携する動きが広がる。目指すのは、業務効率化とサービスの向上。「縦割り」「時間がかかる」といった“お役所仕事”のイメージ払拭へ、奮闘が続く。
「デジタルを前提に、サービスの仕組みを抜本的に見直す」。9月中旬、都内で開かれた都のデジタル構想に関するイベントで、小池百合子知事は意気込みを語った。
ファクス使用を99%減らすなど「紙からデジタルへ」の取り組みを進めてきた東京都。さらにデジタル化を行政サービスの向上につなげるけん引役として、今年7月に設立したのが一般財団法人「GovTech(ガブテック)東京」だ。
元ヤフー社長の宮坂学副知事が理事長に就任、2人の業務執行理事も民間から招いた。従業員は都職員や民間の技術者ら50人で、国籍は不問。9月から事業を開始し、都内62区市町村と一体でシステムの共有や新たなサービスの創出を目指す。
都によると例えば子育て支援では、自治体や保健所などのデータを連携。妊娠から出産、育児といった段階ごとに、児童手当や保育サービスなどの必要な情報を、申請がなくても切れ目なくプッシュ型で届けられるような変革を目指す。
また新型コロナウイルス禍のようなケースでの給付金も、一度申請した事業者のデータを蓄積して次回以降の申請を簡素化できるようにする。宮坂氏は「東京が全国の自治体のお手本となり、ロールモデルをつくっていきたい」と話した。
一方で、デジタル化の推進に不可欠な、専門知識を持つ人材は全国的に不足している。ガブテックでは、通年採用やリモート勤務可などの柔軟な人事制度を生かして専門家を採用し、区市町村に派遣。短時間なら働けるという人に登録してもらい、活動の場を提供することも検討している。
人材確保は各自治体共通の悩みだ。専門家を市町村とプール・シェアする取り組みは他県でも広がる。広島県は、任期付き採用などの6人を7市町に派遣。愛媛県では「データ利活用」「セキュリティー」などの分野ごとに専門官に任命された5人が、県内全市町を回り支援している。
国も後押しする。2023年度から、都道府県が市町村のデジタル化を支援するために採用した人材の人件費などの7割を特別交付税で支援。デジタル化の中核を担う職員の育成関連経費も、同様に手当てしている。