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デジタルで保育士の負担軽減  北九州市の保育園で試み 呼吸チェック、危険予知…


デジタルで保育士の負担軽減  北九州市の保育園で試み 呼吸チェック、危険予知… タブレット端末を操作する「にじいろのはな保育園」の吉田真由美園長(右)と「ハピクロ」の中田佳孝社長=8月、北九州市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

北九州市のスタートアップ企業「ハピクロ」が運営する保育園で、デジタル技術を活用し保育士の負担を軽減する試みが続いている。送迎バスへの置き去りや不適切保育など命に関わる事故の対策が課題となる一方、保育の現場では人手不足が依然として深刻だ。心と時間に余裕を持って園児と接し、安全を確保する環境づくりを目指す。
「にじいろのはな保育園」の園長吉田真由美さん(48)は「笑顔で働ける園がきっといい園になる」と訴える。かつて勤務した幼稚園では、サービス残業や仕事の持ち帰りが当たり前。「結婚したら続けられない」と考え、5年で退職した。
転機は2016年に市内で開かれたビジネスイベント。託児サービスの担当だったが、依頼はなく、イベントに参加し「子どもにも保育士にも寄り添う園をつくりたい」と主張した。当時大手IT企業の開発職で、地域課題の解決に興味があった中田佳孝社長(43)と意気投合し、2年後、保育園開園につながった。
園にはハピクロが開発した技術を導入。園児の昼寝中に正常な呼吸が検知されないと、ブザーが鳴るマットはその一つだ。5~10分おきの呼吸チェックは保育士にとって負担が大きく、機械と人の二重チェックで「精神的負荷を下げている」(吉田さん)。
昨年、AI(人工知能)を使い園内の危険を予知する実証実験も始めた。保護者の許可を得て教室や園庭にカメラを設置し、AIが蓄積したデータを学習。「落ちている玩具を踏みけがをするかもしれない」「机が倒れ当たるかも」などの予測をパソコン画面に表示させ、事故回避につなげる。24年の製品化を目指している。
同社は開発したソフトウエアを販売、収益を園の運営費に回し、人数に余裕を持って保育士を雇用するなど待遇改善に役立てている。園では担当クラスに関係なく全職員で仕事を分担して助け合う「ワークシェア」も導入し、効率化にも力を入れる。「機械を入れて終わりではない」と中田さん。子どもの命を守る保育士らの働きやすさの重要性を強調した。