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「日本で心疾患減」根拠なし/加熱式たばこ/米大手主張に反論


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 紙たばこから加熱式たばこへの切り替えは健康に有益―。米国のたばこ大手フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)によるそんな研究結果について、藤原久義・兵庫県立尼崎総合医療センター名誉院長らが根拠の乏しさを指摘する論文を10月、米心臓協会の学術誌に発表した。
 問題の研究結果はPMIが昨年6月に発表。日本で加熱式たばこの普及が本格化した2017年を境に、喫煙に関連する病気である虚血性心疾患による入院数が増加から減少に転じたと日本のデータを基に主張した。
 これに疑問を持った藤原さんらは日本の372病院の13~19年度のデータを使い、虚血性心疾患による入院数を分析。虚血性心疾患のうち、急性心筋梗塞と不安定狭心症、この二つを合わせた急性冠症候群(ACS)による入院数はいずれも17年前後で傾向に変化はないとの結果を得た。
 残る慢性虚血性心疾患だけは17年前後で入院数が増加から減少に転じていた。その理由について藤原さんらは、18年度に公的医療保険の適用が見直され、不要なカテーテル治療が減ったためではないかと指摘した。
 「受動喫煙防止など喫煙規制による効果がすぐに表れるのはACSのデータだ。それを出さずに都合のいいデータだけを発表したのでは」と藤原さん。
 PMIは7月、ウェブサイトで公開していた研究結果を紹介する動画を「研究の方法論やデータ解析が不正確だった」などとして削除した。