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老いても思い出の味を 介護食市場 5年で1.5倍


老いても思い出の味を 介護食市場 5年で1.5倍 アサヒグループ食品が発売した「スプーンで食べるおもち」
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 介護食品市場が拡大している。民間調査会社の調べによると、2022年の市場規模は17年の1.5倍に成長。手軽においしく食べられるレトルトタイプが人気で、自宅で高齢の家族を介護する世帯で手に取る人が多い。メーカーは、老いても思い出の味を楽しんでもらおうと商品を拡充しており、医療や介護現場への業務用の導入も進んでいる。
 アサヒグループ食品は9月、「スプーンで食べるおもち」を発売した。かんだりのみ込んだりする力が弱くなった人でも食べられるよう、軟らかく仕上げた。餅は喉に詰まる恐れがあるため、正月に雑煮を食べられない高齢者が多い。開発担当者は「家族で一緒に餅を食べられるようになる」と説明する。
 調査会社インテージ(東京)によると、家庭向けの介護食品市場は17年の86億円から、22年には130億円に増加。在宅介護向けにドラッグストアでの扱いが増えている。牛丼チェーンの吉野家は「なじみの味を食べ続けてほしい」と、17年2月から介護食用の「牛丼の具」を販売する。利用者に合わせた硬さを複数用意し塩分濃度も研究した。
 キユーピーは、自社のレトルト介護食に一手間加えるだけで「おせち」にできるレシピを公開。広報担当者は「食経験が豊富な高齢者にも楽しんでもらうことで販売を拡大する」と話す。
 病院や介護施設でも需要が伸びている。食品メーカーなど95社でつくる日本介護食品協議会は、介護食の硬さについて4段階の規格を定めており、利用者に合わせた食事を提供することが可能だ。藤崎享事務局長は「調理人の人手不足の解決策として利用が増えているようだ」と説明する。