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診療報酬の24年度改定 財務省 「診療所は利益多すぎ」 日医 「現場疲弊、賃上げを」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 医療サービスの対価である診療報酬の2024年度改定について攻防が激しくなってきた。診療所のもうけが多すぎると大幅引き下げを求める財務省に対し、厚生労働省や日本医師会(日医)は人手不足で疲弊する医療現場の賃上げが不可欠との立場。社会保障費抑制という課題もある。年内の改定率決着の期限が迫る中、隔たりは大きい。
 原則2年に1度改める診療報酬は人件費など「本体」と、薬の値段の「薬価」に大別される。
 診療所は病床が19床以下で、病院は20床以上。財務省は22年度の診療所の経常利益率8・8%が、中小企業の3・4%を上回るとした分析結果を発表。新型コロナウイルス関連補助金などで利益剰余金も多いとする。国の22年度調査で医療法人運営の診療所院長の平均年収は約2652万円。
 22年度46兆円の医療費の財源は約4割を公費、約5割を国民や企業が払う保険料、約1割を患者の窓口負担で賄う。財務相の諮問機関である財政制度等審議会は11月、診療所の報酬単価を5・5%程度引き下げれば、年約2400億円の保険料負担が減ると提言した。
 12月1日の中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)で健康保険の運営側委員は「コロナ補助金を含め医療機関の経営は堅実だ」と述べた。これに対し医療業界団体の委員は「コロナ補助金は一過性の収益だ」と反論。看護補助者や技師らの賃金は低く、人材が流出していると強調した。
 日医の松本吉郎会長は11月の記者会見で「医療、介護の就業者数は全国900万人を超える」と多さを指摘し「物価高騰の中、安全で質の高いサービス提供には賃上げで人材確保することが不可欠。思い切ったプラス改定でしかなしえない」と訴えた。厚労省は処遇改善の実績に応じ、医療機関に報酬を加算する仕組みを検討する。
 政府は児童手当拡充など少子化対策の財源確保に、社会保障の歳出改革を掲げる。首相は11月に「900万人の賃上げがないがしろにされてはいけない。歳出とのバランスを取りたい」と公明党幹部に語った。自民党厚労関係議員は人手不足を念頭に「賃上げしないと医療崩壊する」と危ぶむ。