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火星衛星探査、延期検討 政府 万博宇宙中継は困難に


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が火星の衛星に無人探査機を着陸させ、世界初の岩石試料持ち帰りを目指す「MMX」計画について、政府が予定した2024年から26年に延期を検討していることが3日、関係者への取材で分かった。探査機は国産新型のH3ロケットで打ち上げるが、1号機失敗の影響で、2号機以降の打ち上げ計画の大幅変更は必至で、延期は不可避とみられる。政府は、近く会合を開いて専門家の判断を仰ぐ。
 25年大阪・関西万博では、開催中に火星圏に到着する探査機と会場を映像で中継する計画もある。探査機が捉えた火星の精細な画像を映し出すことを想定した万博の目玉企画の一つが、頓挫することになる。
 今年3月のH3の1号機失敗では、搭載した地球観測衛星が失われた。再発防止策を講じた2号機は計画通り24年3月までに打ち上げる方針だが、念のため搭載物は変更された。これにより3号機以降の搭載物は、MMX探査機も含めて打ち上げ順が見直される。
 太陽を公転する火星への探査機打ち上げは、地球からの距離が変動するため24年9月ごろに限定される。次の適切なタイミングも26年ごろに限られる上、優先して打ち上げが必要な衛星もあるため調整は困難な状況だ。H3が再び失敗する可能性も否定できず、政府内では、延期してでも世界初となる試料持ち帰りを達成させるべきだとの判断に傾いたもようだ。
 現在の計画では、24年9月に探査機はH3で打ち上げられ、25年8月ごろに火星圏に到着。火星の衛星「フォボス」に着陸して岩石試料を採取し、29年ごろに地球へ持ち帰る。フォボスには火星から飛来した岩石が降り積もっているとみられ、火星の形成過程の解明も期待される。打ち上げが26年になれば、帰還も2年遅れる見通し。
 火星圏からの試料持ち帰りは、米国や欧州、中国でも計画がある。各国でも計画は難航しているとみられ、2年延期しても日本が世界初を達成できる可能性が高いことも判断の背景にある。
 MMX 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が進める、無人探査機を使って火星の衛星フォボスから岩石試料を回収するミッション。英語の「Martian(火星の) Moons(衛星) eXploration(探査)」の略称。火星衛星の起源や太陽系における水や有機物の由来に迫るとともに、火星圏へ到達した後に地球へ帰還する技術の確立も目指す。サンプルリターンと呼ばれるこの分野では、日本は探査機「はやぶさ2」で小惑星からの試料持ち帰りに成功し、世界をリードしている。