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決定過程検証に高い壁/NSC創設10年 安保転換 司令塔に


決定過程検証に高い壁/NSC創設10年 安保転換 司令塔に 国家安全保障会議(NSC)の概要図
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 外交・防衛政策を統括する国家安全保障会議(NSC)が4日、発足10年を迎えた。集団的自衛権の行使容認や、他国領域を攻撃する反撃能力(敵基地攻撃能力)保有など戦後の安保政策の転換を推進。経済安保など新たな課題への対応も担い、首相官邸主導の強化に一定の役割を果たした。一方、高い機密性が求められることを理由に決定過程はほとんど公表されていない。
 松野博一官房長官は4日の記者会見で「NSCは安保政策の司令塔として機能している」と強調。「今後も政治がリーダーシップを発揮し、政策を機動的、戦略的に進めていく」と述べた。
 NSCは安倍晋三首相(当時)が主導し、2013年12月に発足。首相や外相による4大臣会合や、財務相らも加わる9大臣会合がある。14年1月に事務局の国家安全保障局(NSS)を設置。現在は元外務事務次官の秋葉剛男氏が局長を務め、岸田文雄首相の指示を受けて各国の外交・安保担当責任者と交渉するほか、政策立案の総合調整に当たる。
 15年9月成立の安保関連法では集団的自衛権の行使容認を理論面で支えた。20年以降は政府の新型コロナウイルス対策をリード。22年12月には国家安保戦略など安保関連3文書を改定し、歴代政権が踏み切れなかった反撃能力保有にこぎ着けた。協議中の防衛装備品の輸出ルール見直しにも深く関与する。
 20年4月に経済班を新設。中国への対処を念頭に、経済安保政策を担当する。
 NSCは330回以上開かれたが、議題以外は発表されない。関連文書の一部は、NSCと併せて整備された特定秘密保護法に基づき、特定秘密に指定されている。国家の在り方を左右する重要な政策決定過程を事後に検証できるかどうかという問題は残ったままだ。