<金口木舌>人知は計り知れぬが…


<金口木舌>人知は計り知れぬが…
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 車一台がなんとか通れる坑道を約2キロ進むと、巨大な観測施設があった。岐阜県飛騨市神岡町の山中にあるスーパーカミオカンデを訪ねた

▼宇宙、地球、果ては身近な物質は何からできているのか。分子、原子、原子核…。物質を細分化していくと最小単位の素粒子に行き着く。施設は素粒子の一つニュートリノを観測する。目に見えず、質量ゼロとされた素粒子だ
▼さかのぼれば1930年ごろ。オーストリアの科学者が研究過程で未知の「何かがいる」と予想し、素粒子研究は始まった
▼「何か」を検出したのは小柴昌俊さん。梶田隆章さんが質量の存在を示す「振動」現象を発見し、それぞれノーベル物理学賞を受賞した。物質の源を突き詰めれば、宇宙の成り立ちも解き明かせるといわれる。人知は計り知れない
▼梶田さんが20年に県内の講演で語っていた。研究は生活を直接には豊かにしないものの「宇宙の仕組みを理解することは、地球上の人類の共通の財産になる」。宇宙を解明する人知があるのに、地上で続く争いを止められないのか、とも思う。