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時代の岐路 心に喝を 中島みゆき 劇場版夜会の軌跡1989・2002 桜坂劇場できょうから


時代の岐路 心に喝を 中島みゆき 劇場版夜会の軌跡1989・2002 桜坂劇場できょうから
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 「私たちが生きるこの時代には、中島みゆきの、歌がある」。そんなキャッチコピーが胸に染みた前作、ライブベスト第2弾。まだまだコロナ禍を抜けきれていなかった2022年。マスク着用を筆頭に、息苦しいことを息苦しいと言ってはいけない重圧を感じないふりをして、みんな頑張って生きていた。そんな無意識に縛られていた心を、みゆきさんの歌に解き放ってもらった。自然と涙があふれ、苦しかったことに気づいた。
 この1年の間にも社会は変わった。観光客の増加や夜の街のにぎわい、きっと忘年会も再開される。閉塞(へいそく)感がずいぶんなくなった。でも、良くも悪くも、もう昔には戻れないと感じる。新しい時代のはじまり。そんな中でどう生きるか。
 1989年はみゆきさんが「夜会」という新しい試みをはじめた年。コンサートとは違う表現を模索し続けるみゆきさんの軌跡を追った本作。そのお姿は、時代の岐路に立ち、右往左往し、時に投げ出したくなる心に喝をくれる。(桜坂劇場・下地久美子)