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強まる政権批判 首相は更迭を否定 与党にも辞任論


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティーの裏金問題を巡り、与野党から8日、松野博一官房長官の辞任論が浮上した。松野氏は衆院、参院の予算委員会で、松野氏側に1千万円超の還流があったとされる疑惑に関する説明を回避し続けた。野党は批判し、事実関係の説明や辞任を要求。与党にも辞任は避けられないとの見方が出た。岸田文雄首相は松野氏の更迭を否定した。
 疑惑を巡り、首相は衆院予算委員会で松野氏の進退を問われ「政府のスポークスマンとしてしっかりと発信してもらう」と更迭を否定。党全体の問題だとし「厳しい目が注がれている。深刻に受け止めなければならない」と語った。資金還流が政治資金規正法に違反するとの指摘には「告発を受けており、捜査に影響を与える恐れがある。発言は控えなければならない」と言及を避けた。
 安倍派では最近5年間で1億円超が裏金になったとみられている。松野氏は衆参の予算委員会で「私の政治団体についても精査し、適切に対応したい」との答弁を繰り返した。
 午前、午後の記者会見でも計30回を超える質問を受けたが、安倍派の裏金疑惑には「派閥で事実確認している最中だ」と同じ言い方を重ねた。
 野党は松野氏に厳しい目を向ける。立憲民主党の泉健太代表は記者会見で「答弁もできず、業務に相当支障が出ている。辞任を要求する」と強調。共産党の田村智子政策委員長は会見で、実態を説明するよう求め「疑惑を持つ閣僚が政治の中枢にいるのは不適切だ」と断じた。両党は松野氏の証人喚問を要請した。
 自民党内でも「この答弁が続くなら政権批判が強まる。松野氏は持たない」(岸田派中堅)、「松野氏自身が進退を判断すべきだ」(政務三役経験者)などと進退論への言及が複数上がった。
 松野氏は、安倍派の実力者「5人組」の一人。岸田政権発足時から官房長官を務めている。

収支不記載の故意性焦点
 自民党派閥の政治資金パーティー券問題では、東京地検特捜部が政治資金規正法違反容疑で安倍派を重点的に捜査。派閥事務方や派閥からキックバック(還流)を受けたとされる議員の秘書へ事情聴取を進めており、今後、議員の関わりの有無も確認する。政治資金収支報告書への故意的な不記載などがあれば政治団体の会計責任者が立件され、議員が詳細を把握していれば共謀したとして罪に問われる可能性がある。
 同法は、政治団体の会計責任者に収支報告書の提出義務を課しており、特捜部はまず会計責任者の刑事責任を追及するとみられる。
 安倍派では、パーティー券の販売ノルマを超えて議員が集めた分を還流しながら、派閥側の支出、議員側の収入として、それぞれの収支報告書に記載していなかったという。ミスではなく、裏金づくりを隠す目的などと判断されれば故意性が高まる。不記載額が大きければ、より悪質と判断される。
 特捜部は昨年12月、パーティー収入などを正確に書かず、収支報告書の収支を実際より少なく記載したとして同法違反の罪で、薗浦健太郎元衆院議員と元秘書2人を略式起訴した。立件額は収支合わせて約4900万円だった。
 問題となった政治団体の会計責任者を務めた元秘書が、メールや資料で収支に関する報告をしていたとされ、薗浦氏の共謀が認定された。

野党、証人喚問を要求
 野党は8日、自民党安倍派の政治資金パーティーを巡り1千万円超の還流疑惑が浮上した松野博一官房長官に対し、証人喚問を含め説明責任を果たすよう求めた。公明党の石井啓一幹事長は記者会見で「できるだけ丁寧に説明してほしい」と松野氏に注文した。
 立憲民主党の泉健太代表は会見で「官房長官に大きな疑念がかかっている。事実でないなら明確に言うべきだ。開き直るのは常識では考えられない」として証人喚問を要求。日本維新の会の馬場伸幸代表は「事実であればゆゆしき問題だ。きっちり調査し早急に説明してほしい」と求めた。
 共産党の田村智子政策委員長は「真相解明を遅らせることはあり得ない。証人喚問をすべきだ」と言及。国民民主党の榛葉賀津也幹事長は「何を聞いても『答弁を差し控える』では国民は納得しない」と訴えた。