<金口木舌>上里グスクを誇りに


<金口木舌>上里グスクを誇りに
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 敵方同士を仲たがいさせ、謝名の大主を捕らえて主君のあだ討ちを果たす。組踊の傑作「久志の若按司」は、村芝居でも広く演じられてきた

▼物語の舞台、名護市久志集落の北側に「上里グスク」(久志グスク)と呼ばれる丘陵地がある。久志の若按司の居城だったという伝承が残るが、十分な調査は進んでいない。実際に若按司がいたのか、集落でも議論が続いてきた
▼このほどグスクの鳥瞰(ちょうかん)図が完成した。制作者で空間デザイナーの池上典さんは県立博物館・美術館などのデザインに携わり、高遠城(長野県伊那市)の再現図も手掛けた
▼上里グスクは資料が少ない中での書き起こしとなり「想定推測」で進めたという。「事実と異なるもの、新たな事実が発見されたら、どんどん付け足してほしい」と語る。区民に「絵を育ててほしい」との思いを込めた
▼「昔はたくさんヤマモモがとれた。皆で名所にしていこう」と語るのは区の有識者の高江洲徳雄さん(90)。絵をきっかけに思い出話にも花が咲いた。区民の誇りとなることだろう。