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脚の動脈硬化 解明へ 患者70歳以上の2~5%


脚の動脈硬化 解明へ 患者70歳以上の2~5% 下肢動脈疾患の大規模研究に取り組む東信良・旭川医科大病院長(右)と河辺信秀東都大教授=東京都大田区
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 酸素や栄養を全身に運ぶ動脈が柔軟性を失い、脳梗塞や心筋梗塞の原因となる「動脈硬化」。脚にも起こり、高齢者で心身の機能低下をもたらす一因になっているとの見方がある。その実態を調べ、予防や早期発見を目指す日本初の研究が進められている。

日本初の大規模研究 
ふくらはぎ痛み
 「動脈硬化が脚でも起こることはあまり知られていない。脚で重症化すると最悪の場合、歩けなくなる。それがいかに人生を変えてしまうか、多くの方に知ってもらいたい」と旭川医科大病院の東信良病院長は話す。
 動脈硬化が進み、血管内部が細くなったり詰まったりする病気を「下肢動脈疾患」(LEAD、リード)という。症状としては、歩行中にふくらはぎなどが痛くなり、休むと改善する「間欠性跛行(はこう)」がある。
 脚の筋肉は歩行時に大量の血液を必要とする。動脈硬化のために血液が十分に流れないと筋肉が痛くなり、動きが止まってしまうのだ。
 LEADの患者は70歳以上人口では全体の2~5%に上るとみられ、喫煙者のほか、糖尿病や脂質異常症、腎不全の人がなりやすいとされる。
 上腕で測った血圧と足首で測った血圧の比(ABI)が0・9以下だとLEADの可能性が高く、日本循環器学会などの診療ガイドラインは循環器科や血管外科の受診を勧めている。

症状のない人も
 症状が進むと安静にしていても血液が不足し、足が痛むようになる。さらに進行すると足の皮膚が壊死(えし)したり、けがをすると傷が治らず難治性の潰瘍になったりして足の切断に至る場合もある。
 東さんによると、間欠性跛行の症状が現れないLEADの患者も少なくないという。海外の研究で、症状のない人は症状のある人の2~5倍もいるとの推計がある。
 症状のある人よりもない人の方が、加齢に伴って心身の機能が低下する「フレイル」という状態になりやすいとする研究結果もある。「普段、身体活動量の少ない人は脚が痛くなるまで歩かないので症状が出ないまま、機能が衰えると考えられる」と河辺信秀東都大教授は説明する。

参加者を募集
 症状のない場合も含めLEADがどのように進行し、フレイルとどう関連するのかを調べる日本初の大規模研究を、日本フットケア・足病医学会と医療法人社団恵智会(東京)が4月に始めた。早期発見や予防につなげるのが狙いで、東さんがチームの代表を務め、河辺さんも加わる。
 計画では50歳以上90歳未満の計640人を集め、歩行機能や下肢の血流を年1回検査し経過を5年間観察する。ABIが0・9以下の人に加え、0・91~0・99の「境界型」の人、比較のため1以上の人も対象とする。
 チームは研究対象として参加する人を募集中。選ばれると東京都渋谷区にある同医学会の臨床研究センターで年1回検査を受ける必要があり、交通費の一部を補助する。
 応募や問い合わせは同医学会のウェブサイトで受け付けている。電話による問い合わせは月曜~金曜(平日のみ)の午前10時~午後5時に同センター=03(6427)3066=へ。