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寄稿/フィンランドで琉球古典音楽/山内昌也/持続可能な友好関係築く


寄稿/フィンランドで琉球古典音楽/山内昌也/持続可能な友好関係築く フィンランドのシベリウス音楽院で琉球古典音楽の紹介と実演をした山内昌也(中央)=10月30日(提供)
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 10月28日~11月5日にフィンランドを訪れた。昨年度音楽学部が主催した「アーティスト・イン・レジデンス」において、フィンランドのシベリウス音楽院の教員で、カンテレ(フィンランドの民族楽器)とチェンバロ、ギターという世界でも類のない編成で活躍しているトリオ「Superpluck(スーパープラック)」を招聘(しょうへい)し、レクチャーおよび演奏会を実施した。その中で、本学の塚本一実教授(作曲)による新作が初演された。先述の楽器群に歌三線が加わるという編成であり、「ぜひ次回は、ヘルシンキで」の約束を交わし実現した。
 スカンジナビア・ニッポンササカワ財団の助成を受け、スーパープラックとの共演のみならず、シベリウス音楽院とタンペレ応用科学大学の協力を得ることができ、琉球古典音楽の紹介と実演を網羅した企画となった。フィンランドで琉球古典音楽の演奏は史上初ではないだろうかと想像し、北欧の地で古典音楽がどのような響きを奏でるのか、期待を胸に現地に向かった。
 世界中の音楽は、その土地の気候や風土と密接な関係性を構築し、長い年月をかけて連綿と受け継がれている。北欧の地で古典音楽は違和感がなく、聴衆は静かに耳を傾け、その見たことも聴いたこともないであろう三線や古典音楽に対し、演奏会終了後、さまざまな質問と共に「Kiitos paljon」(キートスパルヨン)(どうもありがとう)と笑顔で対話した。音楽は自由に国境を超えることができるのである。
 また、道中で「奉納演奏」もできた。毎年首里城焼失の日(10月31日)に世界遺産で国宝の「玉陵(たまうどぅん)」にて、奉納をコンセプトとした「琉球古典音楽パフォーマンスアート」を実施しているが、今年はヘルシンキにある「テンペリアウキオ教会」(岩の教会)で実施した。遠くヘルシンキから琉球沖縄に「音」が届いてくれれば幸いである。
 今後はヘルシンキ大学とも共同し、沖縄とフィンランドを結ぶさまざまな企画を提案する。持続可能な文化芸術・教育友好関係を築き「豊かな心」を双方で育むことができればと考える。
 (県立芸術大学教授)