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政治家立件「指示」焦点 検察本気でも高いハードル 安倍派議員裏金問題


政治家立件「指示」焦点 検察本気でも高いハードル 安倍派議員裏金問題 パーティー収入の過少記載について取材に応じる薗浦健太郎衆院議員(当時)=2022年11月、国会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自民党派閥の政治資金パーティーを巡り、東京地検特捜部は政治資金規正法違反容疑で安倍派(清和政策研究会)側の強制捜査に乗り出す方針を固めた。形式犯と扱われがちだった規正法違反だが、「政治とカネ」に対する市民の見方が厳しくなり、捜査に当たる検察の本気度も変化しつつある。ただ、政治家本人の立件は、指示など具体的な関与が確認された場合に限られており、ハードルはなお高い。捜査のポイントをまとめた。(1面に関連)
 同法は、政治資金収支報告書への不記載や虚偽記入の処罰対象を会計責任者と定めている。そのため、議員本人を共犯に問うには具体的な指示や了承があったことを立証する必要がある。
 今回は派閥側の収支とともに、パーティー券の販売ノルマ超過分の還流を受けた議員側の収入の不記載が問題となっている。派閥の実務を取り仕切る歴代事務総長も還流を受けたとされ、双方の不記載について捜査対象となる可能性がある。
 特捜部は安倍派の会計責任者や議員秘書らへの事情聴取を進めており、議員関与の有無や程度を詳細に調べるため、強制捜査により関連資料を幅広く収集したい考えだ。

1億円

 同様のケースでは特捜部が昨年12月、パーティー収入を過少に記載したとする同法違反罪で、自民党に所属していた薗浦健太郎元衆院議員を略式起訴している。元秘書が薗浦氏に宛てたメールなどで、収支に関する報告が裏付けられた。
 かつて同法による摘発は、2004年に村岡兼造元官房長官が在宅起訴され、旧橋本派元事務局長との共謀が認められて有罪が確定した日本歯科医師連盟の献金隠し事件のように、1億円規模の高額なケースに限られていたが、薗浦氏の場合は5千万円足らずだった。今回も議員側の不記載額は1人当たり最大5千万円程度とされ、いくらが立件のボーダーラインになるかも注目される。

検察審査会

 立件額の基準が下がっている背景の一つと指摘されるのは、市民をメンバーとする検察審査会が政治とカネに厳しい見方をしていることだ。
 地元有権者に香典を提供したなどとして公選法違反罪で略式起訴され、罰金刑を受けた菅原一秀元経済産業相や、河井克行元法相の買収事件で現金受領者となった広島県議らはいったん不起訴となったが、検審が「起訴相当」と議決したことで検察が再捜査し、処分が覆った。こうした近年の状況も立件の判断に影響する可能性がある。
 政治資金規正法違反(不記載・虚偽記入)の罪で有罪が確定すると、原則5年間、公民権が停止される。
 薗浦氏は辞職したことなどが考慮されたとみられ、停止期間は3年に短縮された。