<金口木舌>乖離した感覚


<金口木舌>乖離した感覚
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 世相を表す今年の漢字に「税」が選ばれた。防衛力強化に向けた増税、税収増の還元を名目とした定額減税、消費税のインボイス(適格請求書)制度の導入など、税の話題にあふれた一年だった

▼「増税なのか減税なのか」「軍備増強の財源も示されず増税必至」「インボイス制度が始まり消費税が実質増税に」。日本漢字能力検定協会の発表文に応募者の声が紹介されている。生活に直結する税。批判の声が多い
▼矛先は税の使い道を決める人たちに向く。政府の閣僚や与党自民党の国会議員に広がる政治資金パーティー券裏金問題を見ても、私たちと同じ感覚とは思えない
▼「国民の信頼回復のために火の玉となって自民党の先頭に立ち取り組む」。臨時国会閉幕の13日、岸田文雄首相は記者会見でこう表現した。耳を疑う
▼首相の言葉は戦時中、大政翼賛会が掲げたスローガン「進め一億火の玉だ」を想起させる。日本は戦費調達のために増税した過去がある。同じことを繰り返してはいないか。確かなのは庶民感覚とは乖離(かいり)しているということだ。